杭州の茶館の喫茶スタイル

旅先で触れる新しい茶の楽しみ方(杭州の茶館・湖畔居にて)

私がお茶に興味を持ったプロセス

第1話で少し触れましたが、我が家は典型的な”急須の無い家”でした。

それが変わり始めたのは、今から13年ほど前の台湾への旅行。

帰国前日、「お土産に烏龍茶でも買っていくか」と軽い気持ちで、ガイドブックに載っていた台北のお茶屋さんを訪問。
すると、烏龍茶だけでも、思っていたよりも色々なタイプのお茶があることに驚きました。
そして、テーブルについて試飲をさせてもらうと、どれも個性的で美味しい。
とてもあの青い葉からとは思えない様々な香りが出てくることも魅力的に思えました。

すぐにお茶を買って30分ぐらいで出るつもりが、あれやこれやと2時間ほど色々試飲させてもらうことに。
淹れ方も教えてもらいましたが、熱湯を注ぎ、頃合いになったら茶海に移すだけ。それほど難しそうではありません。
お店の方も、とても親切で好印象だったので、お土産込みで確か2kgぐらいのお茶を購入して帰国しました。
日頃、ほとんどお茶を買わない人でも旅先では買うのです。

しかし、お店で聞いた話だけでは、どうも全体像が掴めません。
そこで帰国後、中国茶の本を片っ端から買ったり、インターネットで調べたり。

色々な情報が入ってくると、「次はこのお店に行ってみよう」「このお茶も探してみよう」と訪台時の目的が増えていきます。

そのような情報を元手に、次の訪問では別のお店にも訪問。
すると、また違うタイプの美味しいお茶に出会い、「なんだ、これは」と。
作り手やお茶屋さんの考え方次第で、色々なお茶があることが判明します。

帰国してから、そのお茶の素性を色々調べていると、また次回、行ってみたい場所が沢山出てきて・・・

と、このようなサイクルを繰り返していくうちに、台湾への訪問頻度が年1回から年3回へ。
会社の同僚からは、「また台湾に行くの?」と呆れられるようになりました。

 

ついでに「大陸のお茶も見てみよう」と、たまたま出かけた杭州で龍井茶を飲んだら、これまた美味しい。
しかも、「中国緑茶は、コップにそのまま漬けておいて、差し湯するだけなんて、これは楽だ!」と。
そこから、大陸のお茶にも強く関心を持つようになりました。

どんどん情報を集めるためにネットショップのメルマガを片っ端から取り、面白そうなお茶は、色々注文してみました。
ピンと来たお茶は一通り飲んでみたかったのです。

ただ、「まずは味見で良いのに、いちいちお茶を最低ロットとはいえ、25gとか50gも買っていたら、効率が悪い」と思い始め、中国茶教室の門を叩くことに。
そこでは、勉強しながら数種類のお茶を飲めるので、最初、「これは正解だ」と思ったのでした。

が、話を聞いていると、さらに知らないことが出て来ます。そうなると、飲んでみたいお茶が、さらに増えます。
効率良く色々な種類を飲むために講座に通ったはずが、今まで以上に、ネットショップでの購入や実店舗さん詣を繰り返す羽目に陥りました。

さらに、こうした講座だったり、お店で教えてもらえる内容では、断片的すぎて、どうも物足りない。
通り一遍の、本に載っているような知識ではなくて、もう少し本質について知りたいのだ、と思い始めます。
そこでインストラクターコースなる、より上級のクラスに申し込み・・・

・・・と、こんなことをやっていると、気づいてみたら、僅か3、4年で、お茶や茶器を買いまくる”ヘビーユーザー”に変貌を遂げていたのでした。

 

特殊なケースではなかった

当初は「これは、私がちょっと特殊なケースなんだろう」と思っていました。

そもそも、今から遡ること30年前。
私は数年間、台北に在住していました。いわゆる帰国子女です。
ですから、台湾、特に台北の土地勘はあるし、その頃から台湾烏龍茶は飲んでいました(しかし、何物かよく分からず飲んでいたので、バリエーションに驚くことになりました)。
子供の頃に日本人学校で習ったものなので、大した語彙力はありませんが、カタコトの中国語は話せるので、滞在中はあまり困りません。

こういう、他の方よりは恵まれたバックボーンがあるからだろう、と思っていました。

が、同様に熱心にお茶を追いかけている人たちとの交流が始まり、話を聞いてみると、私は、まったく特殊なケースではないことが分かってきました。

 

「なぜ、お茶に興味を持ったのですか?」と聞いてみると、

現地で飲んで、美味しかったので

という答えが、とても多かったのです。
そのあとの流れは、大体みなさん一緒です。

ある程度の人数が集まる、中国茶のイベントで来場者に聞いてみると、多分、一番多い答えではないでしょうか。

 

さらに「元々、お茶に関心があったのですか?」と聞くと、

「紅茶からの流れで」という方も、それなりにいました(なぜか「日本茶から」という人は少なかった)。

が、私同様、「とりたてて関心があったわけではない」という方も大勢いたのです。

どうやら、私が辿ってきたプロセスというのは、急にお茶に関心を持ち始める人のよくあるプロセスだったようです。

 

「”条件”と”環境”が整えば、お茶の愛好家は自然に増える」という仮説

「消費者のお茶への関心を高めよう」というのは、茶業界のみなさんが腐心していることですし、様々な普及イベントなどで多くの費用を費やしていることです。

しかし、なかなか旗を振っても、道行く人たちに片っ端からお茶を振る舞っても、消費者の関心はなかなか喚起されていきません。
「まるで、砂漠に水を撒くようなものだ」と感じている方もいるかもしれません。

ところが、私と同じように台湾茶や中国茶を追いかけていた人たちは、そんな業界の”普及活動”とは全く別のプロセスでもって、お茶に関心を持ち、大変熱心な愛好家になっているのです。
誰から頼まれたわけでもなく、道徳的な強迫観念に駆られたわけでもなく、あくまで”自分の意思”で”美味しいから”、”楽しいから”と、面倒なはずのリーフティーを喜んで飲んでいるのです。

なかには、「中国茶や台湾茶の追究は、ある程度終わったから、今度は日本茶だ、紅茶だ」という方も出てきています。

 

従来型の「美味しいから飲んでください」「日本人ならお茶を急須で淹れましょう」といった、生産・流通側の視点からの(ある意味)売り込み的・啓蒙的な“普及活動”は、どこの業界でも効果を失いつつあります。
一般の消費者は、売り込まれるのは嫌いですし、道徳的なことを偉そうに言われることは、さらに大嫌いなのです。
しかし、今行われている、いわゆる”普及活動”というのは大抵、そういうスタイルのものです。
どうも、ここに消費者とのギャップがあるように感じられてなりません。

それよりも、お茶に関する周辺の”条件”や”環境”を整え、消費者自身で「飲みたい」「知りたい」という”意思”を高めていただく方が、よほどお茶の愛好家は増えるのではないか?というのが、個人的な経験から感じる「仮説」です。

 

次回は2月10日の更新を予定しています。