第46回:台湾産茶葉への回帰ムード

1週間ほど台湾へ出かけてきました。
毎年恒例の東方美人茶の産地へ出かけたり、いくつかの茶商を訪ねて今年の産況を確認したり。
さまざまな取材を行いましたが、やはり一般の消費者のお茶に対するイメージも気になります。

日本でもそうですが、こうした消費者の動向に敏感に捉え、それに反応した品揃えをするのが、コンビニエンスストアです。

沖縄からの輸入品

日本でもお馴染みのファミリーマートに行ってみると、日本人にとっては大変違和感の無いペットボトルが並んでいました。

ほぼ、日本のパッケージそのまま(※)のペットボトル茶でした。
ウバ紅茶、さんぴん茶、六条麦茶の3種類がラインナップされていました。
※現在、台湾では飲料のカフェイン含有量表記が義務づけられているため、表示ラベルは一部変更されています。

さんぴん茶がラインナップに入っているのを不思議に感じたのですが、ラベルを見ると、これらは沖縄伊藤園が製造したもののようです。
中国産のジャスミン茶が、沖縄を経由して、台湾にさんぴん茶(中国語では「三品茶」表記されていました)として輸入される。
何とも不思議な現象ですが、日本ブランドへの信頼感というのがあるのかもしれません。

茶飲料をとりまく、さまざまな不祥事

「信頼感」という言葉を用いましたが、台湾の茶飲料業界では、近年、茶葉の安全性や信頼性を問われる問題が相次ぎました。

たとえば、2014年には、台湾の著名茶荘などが加担した、第三国を経由した茶の産地偽装問題が発覚しました。
中国大陸から1kg30~60元(約120~240円)の低価格なお茶を買い付け、それを東南アジアなどの第三国を経由し、台湾に輸入されたというものです。

現在も中国からの茶葉の輸入はプーアル茶を除き、ほぼ輸入が不可能な状態です。
が、このケースでは第三国を経由し、書類も改ざんするという方法で規制をすり抜けました。
2010年~2014年の間に、大型コンテナで回数にして50回近くを輸入。
総輸入量は100万kg以上にもなるという、大規模な産地偽装事件でした。

そして、その翌年の2015年には、台湾で大流行しているティースタンドの輸入茶葉から、基準を超える残留農薬が検出されました。
これをきっかけに、ティースタンドの茶葉の大規模な調査が当局によって行われ、その過程で、複雑な流通経路によって茶葉がブレンドされていること。
結果的に、トレーサビリティーが確保されておらず、素性のハッキリしない茶葉が多くあることなどが白日の下に晒されることになりました。

食の安全は、台湾人にとって、非常に関心の高い分野でもあります。
ティースタンドでも、ミルクティーには信頼あるメーカーの牛乳を使用していることを掲げることも多くあります。
また、街で売られているアイスキャンデーなどでも、さまざまな食品認証を得ていることや損害保険に加入していることを安全性の証明として、わざわざPRすることがあるほどです。

このようなことから、当局はティースタンドで販売する茶飲料への産地表示の義務づけやカフェイン含有量の表記など、規制の強化を発表し実施するようになりました。

 

台湾産への回帰の流れ

このような消費者側の変化を敏感に捉えているのがコンビニ各社です。
先に挙げた日本産ペットボトルというのも1つの回答ではありますが、それ以上に強化されているのが、100%台湾産茶葉の使用を謳った商品です。

多くは台湾産でも、ローコストに生産が可能な茶葉を用いています。
具体的には、機械摘みで大量生産が可能になりやすい四季春や金萱などの新品種茶葉を用いたものです。

正直なところ、紅茶はインドやスリランカ、ケニア産などの茶葉を用いたものの方が、コストも低く、味わいは良いと思うのですが、やはり消費者にとって、「安全性」という意味では、輸入茶葉よりも国産の方が、まだ信頼できるということなのかもしれません。
国産茶葉の使用を謳った商品がコンビニの棚では多く目立ちました。

こうした茶飲料用の茶葉というのが一定程度の需要が見込まれるとみたのか、大資本を擁する大手の茶業者の中には、機械化を前提とした大規模な茶園の開発を行っているところも出てきています。

日本同様、茶業者の高齢化や茶価の低迷、採算の悪化などから先行きが懸念されている台湾の茶業界ではありますが、ローコストに安全性の高い国産茶葉を生産するという方向性も1つの発展の方向と見られているようです。

 

次回は6月20日の更新を予定しています。

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