今月の7日・8日、国内では最大の中国茶イベント「第13回 地球にやさしい中国茶交流会」が開催されました。
2008年から、私も含めた中国茶の愛好家グループが自主的に企画し、運営してきたイベントです。

ところが、各種報道にもあるように、2020年の東京オリンピックのため、都内随一の展示場である東京ビッグサイトが長期間使用できなくなるという問題が起きています。
この影響を避ける狙いもあるためか、現在、都内近郊の展示場は満杯状態。
週末の2日間の会場を確保するのが、これまでの任意団体という組織形態では難しくなってきていました。
そこで、今年からは弊社が会場を確保し、運営面は引き続き中国茶交流会実行委員会が行う、「共催」という形に移行。その初回となったイベントでした。

初日は雨模様にもかかわらず、おかげさまで過去最高の来場者数を更新し、両日合わせて約2,600名の来場がありました。

多様な高級茶が並んだティーマーケット

メイン会場の中央を占めるティーマーケットには、中国茶・台湾茶の緑茶、烏龍茶、紅茶、黒茶などがバラエティー豊かに揃いました。
このほかにも、生産者直売の静岡茶や宮崎の釜炒り茶、その他、国内でもあまり流通量の多くない産地の緑茶・発酵茶やインド、スリランカの紅茶など、「中国茶」という看板ではありながらも、国際色はとても豊かに。
この品揃えの豊富さは、中国から視察にお越しいただいた方が、「こんなに多くの茶の種類が揃っているとは思わなかった」と感想を漏らしたほどでした。
日本のイベントだから、烏龍茶ばかりだろうと思っていたのかもしれません。

多くの店舗では、無料試飲を実施していたほか、「様々な種類のお茶を気分や用途に合わせて、色々飲み分けたい・試したい」という、中国茶愛好家の消費スタイルに合わせ、少量パックの茶葉を用意するなど、工夫を重ねていました。
その一方、地域の物産イベントなどでよく見かける「お茶の詰め放題」のようなスタイルで販売する店舗は、1店もありませんでした。

おそらく、日本の茶業関係者の方が、「信じられない・・・」と感じるのは、その価格帯でしょう。
品質の高い中国茶は、そもそも手摘み・少量生産の工芸品のような茶葉が多いということもあり、現地でも高額です。
そのため、販売されていた茶葉の価格帯は、100g1,000円を区切りと考える日本の相場観に照らし合わせれば、高級茶に属する比率がかなり高かったと思います。

たとえば、20gで2000円ほどの茶葉というのは、非常によく見かける価格帯でしたし、なかには10g8000円という雲南省産の紅茶などもありました。
この価格でも、試飲を行ったところ、その味わいに感動して買っていく方も多く、売れ行きは悪くなかったとのことです。

 

このような話をしますと、

「お茶は日常茶飯のもので、安くなければ続かない。だから、こんな値段の茶を売るのは、けしからん」

と茶業者の方によくお叱りを受けます。

実際、面と向かって言われたこともありましたし、「こんなのは長く続かないよ」と捨て台詞を置いていかれることもありました。

そう言われ続けてきたのですが・・・

おかげさまで、地球にやさしい中国茶交流会は来年で10周年です。
その間、ずっと参加し続けて下さるリピーターさんに支えられつつ、新しい方にも次々と参加いただけるようになりました。
結果、来場者数はずっと増え続けています。

・・・どこの業界でもそうですが、古い「業界の常識」は、実績によって覆されます。

 

日用品としての”茶”、嗜好品としての”茶”

何も考えずに飲む、水分補給のようなお茶であれば、価格面を指標として語るのも良いでしょう。

しかし、お茶という飲料に、水分補給や栄養補給以上の”何か”を求めるのが、お茶の「愛好家」です。

愛好家が求める、プラスアルファの”何か”を満たすものこそが、いわゆる「嗜好品」と呼ばれるものです。
茶に、水分補給や栄養補給、口をさっぱりさせる、などの機能性だけを求めるのならば、それは「日用品」であり「嗜好品」ではありません。

このように「日用品」のお茶と「嗜好品」のお茶を混同すると、話がややこしくなります。
切り分けて議論をするべき内容です。

 

「日用品」であれば、できるだけ消費者側の手間を簡便化(たとえばペットボトル飲料化)し、価格を限界まで下げること。
余分なコストを省いて、極限まで原価に近づけた価格で販売し、さらには不味くない程度の品質を維持しながら原価自体を見直して徹底的にロープライスを追求。そして、他社との価格競争に打ち勝つこと。

これしか競争で勝ち残っていく道はありません。
競争の結果として、茶価はどんどん下がります(高度成長期のような強いインフレの環境でなければ)。

人口も経済も右肩上がりで成長する時代なら、販売量でカバーできたので、それで良かったのかもしれません。

しかし、今の日本はそのような状況にはありません。
輸出などで新市場を獲得するのも難しいとなれば、このスタイルでは行き詰まることは火を見るよりも明らかでしょう。
まさにレッドオーシャン。ほとんどの競争者が生き残れない、過酷な競争市場です。

 

日本人なら、皆、お茶には親しみがあります。
飲食店で席に着けば、そっと差し出されるお茶など、「日用品」としてのお茶は、誰でも必要とするでしょうし、消費もしているでしょう。
「お茶の国民への浸透度」というものが、もし統計で測れるとしたら、日本は世界トップクラスなのは間違いありません。

しかし、その一方であまりに日常的に感じてしまっているがゆえに、「嗜好品」としてお茶を楽しんでいる人は、そう多くはないと感じます。
お茶を選ぶ理由を尋ねたときに、「価格」「パッケージ」程度であれば、それは「日用品」の枠を出ていません。

 

「日用品」のお茶であれば、その妥当な価格設定は”原価”の多寡に依りますが、「嗜好品」のお茶であれば、その妥当な価格は、もたらす”効用”に依ります。

分かりやすく喩えるならば、友人を自宅に招いて、5人で高級ワインを1本飲む もしくは 1回分の高級茶を淹れる。
使用する茶葉を5gと仮定して、それを飲んで一緒に時間を過ごしたときの満足感・幸福感が、高級ワイン1本を空けたのと同じ程度だったとしたら、茶葉5gの値段は高級ワイン1本の値段と同額程度でも、理論上は許容される、ということです。

これが「嗜好品」の世界です。

もちろん、アルコール飲料の満足感に匹敵するほどの茶となれば、環境作りや手間暇など、原価も相当かかるはずです。
抽出、つまりはお茶を”淹れる”というところへの投資も必要になるかもしれません。
が、今のところ、”酒税”はあっても”茶税”はありませんので、アルコール飲料より茶の方がリーズナブルになるかもしれません。

こうしたことは、「体質的にアルコールは摂取できないけれど、美味しい、満足感のある飲みものを飲みたい」という方には、すんなり理解いただけるでしょう。
また、コーヒーなど他の嗜好飲料をしっかり勉強した方にとっては、満足感の高い嗜好飲料は相応のコストがかかることを承知していますので、すんなりと中国茶・台湾茶の価格を受け入れる方も見られます。

嗜好品飲料の世界というのは、茶業界が関われていないところで、実は広がっているのです。

 

イベントという「場」が、熱量を高める

今回のイベントの来場者の方のほとんどは、こうした、茶にプラスアルファの価値を感じている、愛好家の方でした。

都内近郊のみならず、遠方からこのために飛行機や夜行バスに乗って馳せ参じてくださった方も、たくさんいました。
そのポジティブな熱量の高さ、好きなものに対するフットワークの軽さは、本当に驚くほどです。

そして、昨年初めて参加した方が今年はリピーターとなり、さらに新しい人が加わり・・・と、年々、こうした方が増えてきているという事実。

こうした事実を積み上げていくと、

「嗜好品」としての茶は、それを楽しむためのインフラ(基盤・環境)をきちんと整えることができれば、意外と拡大余地はあるのではないか

と感じます。

 

なにしろ、愛好者が増える理想的なサイクル・環境をイメージすると、現時点では、あらゆるものが足りていない・整備できていない状況です。
そんな中でも、大勢の方が待ちかねたように会場にやって来て、他の愛好家の方と交流したり、お店やセミナーなどで様々な刺激を受けて、さらにお茶への気持ちを高めて、お帰りいただいている。

こうした姿を最前線で目の当たりにしていると、世間で言われているほど、茶業の未来は暗くないと感じるのです。

 

 

次回は10月31日の更新を予定しています。