中国のお話を引き続き。

まさにピンからキリまで

今回、改めて考えさせられたのは、中国茶の値段の幅広さについてです。

たとえば、中国緑茶の代表格である、龍井茶。

清河坊(河坊街)と呼ばれる、杭州きっての観光地に行ってみると、観光客向けのお茶屋さんが多く軒を連ねています。

こうしたお店の主力商品は、大きな缶20元、小さな缶10元という激安の「龍井茶」。
大きい方でも100g弱の缶だと思われますが、日本円にしても約320円ほど。
このようなお茶が、大々的にプロモーションされています。

「やはり中国。お茶も安いのか」と一瞬、錯覚を覚えるかもしれません。

もっとも、そうしたお茶は、かなり大味だったり、四川省など他地域のお茶だったり。
場合によっては昨年のお茶だったり。安いものには、きちんとそれなりの理由があります。
それでも、そこそこ飲める味だったりするのですが。

一方、同じ「龍井茶」でも、スーパーブランドの1つである「西湖龍井」となると、値段は全く違ってきます。
いわゆる正統な「西湖龍井」を探そうとすると、同じ大きさの缶でも100元以上の値が付きます。

さらにこだわりを深めて、清明節の前に摘まれた(明前の)西湖龍井となって来ると、値段はさらに跳ね上がります。

市中の店舗でも、豪華な贈答用パッケージに入った数千元のお茶として紹介されています。
また、産地の農家に行っても、1斤(500g)で1,000元を下回ることは、まずありません。
さらにこだわって、「本当の一番摘みを欲しい」という話になると、農家の直渡しでも1斤数千元という値段になります。

今回の滞在中、店頭に並んでいた、もっとも高価な西湖龍井は50gで800元(約12,800円)でした。
1斤に直せば8,000元。中国で最高級のお茶となると、このぐらいの値段は普通にするということです。

同じ「龍井茶」であっても、価格差は100倍近くもあるわけです。
まさにピンからキリまでの世界です。

 

どのような人が買っているのか

こうした高級なお茶を買う人は、どういう人なのでしょうか?

少し前までは「高いものほど良いものだ」と言わんばかりに、企業や地方政府などからの買いがあったそうです。
かなりまとまったロットで予約が入るので、茶業界としては実にありがたい存在だったようです。
が、現政権の腐敗撲滅運動の甲斐もあって、この手の買い手は、かなり少なくなっています。

では、どういう人が買うのか?を、お茶の販売店で聞いてみました。
すると、ほとんどがお茶の好きな個人で、自分用だったり贈り物用に買う、とのこと。
気に入ったものだけを数斤単位で買っていくそうです。(なぜかお店でレシートを見せられました・・・)

もちろん、富裕層ではあるのでしょうが、かなり納得して高い金額を支払っているようです。

一度、こうした買い手の方と同席したことがあります。
いかにも良いお茶を飲んできている方らしく、良いお茶でないと全く話にならなそうでした。
彼によれば、「良いお茶がこのくらいの値段するのは当然だ。摘み手の人件費もあるからね」と。

盲目的に値段の高いものを(見栄のために)購入しているのではなく、製造プロセスとそこにかかるコストを把握した上で、きちんと判断をしているようでした。
かなり理解のある消費者であると言えるでしょう。

もっとも、こうした消費者が勝手に生まれたはずはありません。
いわゆる「茶文化」教育などを通じて、お茶の知識や情報、魅力を伝えることで、お茶の価値を不断に高めてきた結果が、こうした消費者を作っています。
その意味では、お店や茶業界の教育の賜物であるとも言えます。
ただの成金ではなく、文化を身につけようとしてきた新しい消費者層です。

一方、観光地の安いお茶に群がるのは、色々な意味で「大衆」です。
どのような生産が行われてのコストなのかを考えて消費活動を行うというよりは、目先の値札に関心が行っているようです。
そこには正直、「茶文化」というイメージはあまりありません。

お茶の価格の差は、単なる品質による価格差だけではなく、そこに付随する「茶文化」の濃密さも大きく反映されているような気がしました。
高い茶価を正当化する上では、品質を高めるだけでなく、情報的・文化的な付加価値も高める必要があるように感じます。

 

次回は5月10日の更新を予定しています。