第130回:コロナ禍の中で”お茶熱”をどう高めていくか

コロナ禍2年目、専門店の仕入れにも変化が

ここのところ、教材茶葉の調達のために、国内の中国茶専門店さんと連絡を取り合ったり、茶葉をお願いすることが続いていました。
昨年お願いしたお店や旧知のお店が多いのですが、お店によっては、コロナウイルスの流行の影響がかなり出てきているように感じます。

もっとも、これは一概に言えるものでは無く、お店の仕入れのスタイル(現地へオーナー自ら出向いて買い付けるのを主とするか、提携業者を活用しているか等)やお店のスタートアップの時期(最近開業したばかりで、販売や品揃えを拡大する時期か、ある程度の地盤ができていて販売スタイルも確立しているか等)、お店の規模(ほぼオーナーで完結、従業員を抱えているか等)によっても違います。

個人的に、いちばん今回のコロナ禍の影響を受けていると感じるのは、

・オーナーが自ら現地に乗り込んで買い付けをし
・現地の情報なども収集しつつ、産地の見聞を広め
・そうした経験や情報などを熱量を持って、商品の説明をし
・自分の店舗やネットショップだけではなく、イベント等でも積極的に販売をする

というようなお店です。
こだわりの強い中国茶専門店には多いスタイルだと思います。

コロナ禍の販売現場から失われたもの

こうしたお店では、販売しているのは茶葉や茶器のようでいて、実はモノだけではありません。
オーナー自身が現地の空気を吸い、生産者や茶商と話をしたり、茶園などを見聞きした情報をも付加して茶葉や茶器を販売しています。
さらに言うならば、現地を経験しているからこそ、そのお茶が本当に良い厳選したものであることを自信を持ってお客様に提案することができます。
”経験に基づく迫力”、”現地の生産者から受け取ってきた熱量の伝播者”と言っても良いかもしれませんが、こうした高いエネルギーは、買い手にも伝わるものです。
ある程度の品質の高いお茶を好むマニア層は、こうしたお店で是非買いたいと思うのではないでしょうか。

しかし、この営業スタイルは、今回のコロナ禍では非常に厳しいものです。

まず、仕入れの面でいえば、現地に行くことができません。
もちろん、近しい関係にある生産者から茶葉を送ってもらうことはできるでしょうし、写真や動画などを送ってもらうこともできるでしょう。
しかし、オーナーの方などが、現地から持ち帰ってくる”熱量”は残念ながら、制限されてしまいます。
取り寄せるにしても、ある程度、品質などが分かっている定番のお茶を仕入れることは可能ですが、現地に行ったときだからこそ見つかる偶然の発見(新しいお茶や試作品のお茶、珍しいお茶等)によるお茶は、なかなか仕入れることができません。
こうしたお茶こそが毎年の売場のアクセントにもなるだけに、こうした要素が得られないのは販売面でもマイナスです。

販売については、イベントなどはほぼ中止もしくは縮小となり、販売機会が減っています。
販売機会が減ること以上に痛いことは、お客さんとの交流が限られることです。
オーナーが現地から持ち帰ってきた”熱量”を伝える場がなくなるということもありますし、お客さんからの”熱量”を感じることもなくなります。

お客さんからの”熱量”というのは、たとえば初心者の方が中国茶や台湾茶を初めて飲み、「こんなに美味しいものがあったのか!」と美味しさに目覚め、好奇心が高まっているような状態のことです。
内側から湧き上がるように出てくる”熱量”というのは、お店の方の考え方にも影響を与えます。
たとえば、「このお茶について知りたい」という好奇心に応えるために、普段のラインナップにはない、特徴を比較するためのロットを限定入荷したり。
あるいは小分けの飲み比べセットを作ってみたりと、お客さんとの交流・キャッチボールの中から魅力的な商品は生まれてきます。
このルートが、ほぼ断絶しているのは売上機会の減少以上に痛いことだと思います。

仕入れ難・販売機会の減少は、商品ラインの縮小と仕入れ量減に

それでもコロナ禍初年度は、ここまでの長期化にはならないだろうという見通しもありました。
そこで取引業者から、前年並みの仕入れを行ったお店も多かったようです。
しかし、影響は予想以上に長引くとともに、度重なる緊急事態宣言の発出や発出期間の長期化で、販売機会が想定以上に制限されてしまいました。
オンラインへ切り替える動きもありましたが、先に挙げたような”熱量”の交換は、オンラインではなかなか難しく、オフラインの売上をカバーするまでには、なかなか至りません。

初年度がこのような状態だったわけですから、当然、お店側としては商品ラインを削減したり、仕入れ量を減らして対応せざるを得なくなります。
実際、中国茶関連のネットショップを楽天市場なども含めてみてみると、このような傾向は進んでいるように見えます。

全体的な量が減っているということは、消費者がよいお茶に出会う機会も減少しているわけで、あまり好ましい状態とは言えません。
現在の状況が収束すれば、回復するだろうというのは、いささか楽観的過ぎる気がしています。
というのは、今までお茶会やイベントなどで交流することによって消費者の間で高まっていた、お茶の”熱”が少し冷めかかっているように感じるからです。
同様にお店の方の”熱”も少し失われてしまっているのではないかと心配になります。

作り手・担い手・飲み手の間の”熱”をどう交換し、高めていくか

今回のコロナ禍で、最も今後に響きそうなのは、この熱量の低下です。
熱量というのは一人一人が持つこともあるのですが、その姿を他の人が見たり、あるいは交流することによって、その熱は伝播し、より大きな熱量に膨らんでいきます。

お茶の場合は、究極的には飲み物であるので、お茶を飲んだり、香りを嗅いだり、茶の空間の雰囲気を味わったりということが最良です。
しかし、それができないのであれば、別の方法で熱量を高めていくことを考えなければいけません。

個人的には、これは「人を見る」ことなのではないかと考えています。

熱量を持っている人というのは、見ているだけでもエネルギーを周囲に発散しているものです。
そして、そうした方は、なかなか大手のメディアなどでも採りあげられませんし、スポットライトが当たりません。
そこに光を当て、紹介していくことが、今の状況下における、一番の方策なのではないかと考えています。

 

次回は11月1日の更新を予定しています。

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