第136回:茶葉生産量300万トン突破も、今後4年間を”踊り場”とした中国の茶業

2022年は本日2月1日が春節となります。
中国では年末から年始にかけて、様々な情報が出て来ているのですが、いくつか注目すべきデータと政府の方針発表がありましたので、ご紹介します。

2021年、中国の茶葉生産量は300万トンを超えた模様

国家統計局のWebサイトで、2021年の経済状況についてのレポートが発表されています。

http://www.stats.gov.cn/tjsj/zxfb/202201/t20220117_1826404.html

これは農業生産の他、工業の生産額等、広範な経済状況について記載したものです。
その中の附表として様々な産業の生産量の記載があり、そこに茶の生産についての表記も見られます。

この表によると、(前年の2020年比で)茶葉の生産量は2%の伸びを示した、ということになります。
2020年の中国の茶葉生産量は297万トンですから、単純に2%の増加とすれば、302.94万トン。
仮に1.5%を四捨五入して2%だったと考えても、301.455万トンになりますから、いずれにしても300万トンは超えた模様です。

茶業の正確な統計については、もう少し時間が経ってから、しかるべき機関より発表されると思います。

これまでの大台突破を振り返ると、2006年に100万トンを突破し、2014年に200万トンを突破。
そして、2021年に300万トンを突破するというペースですから、異常とも思えるハイペースです。

この流れはこのまま続くのか?と思われるかもしれません。
が、どうやら政府の方針では、これ以上の生産量拡大は行っていかない方針のようです。

 

2025年までは、300万トン前後で安定させる方針

その根拠になるのが、昨年末の12月29日に農業農村部が発表した『十四五”全国种植业发展规划(第14期五カ年計画・全国種植業発展計画)』です。

http://www.moa.gov.cn/govpublic/ZZYGLS/202201/t20220113_6386808.htm

この計画では、全国の茶葉生産量は300万トン前後、輸出についても40万トン前後で安定させる方針が示されています。

このような数値としている根拠は、生産量と需要量のギャップが大きくなっていることが挙げられます。
中国国内の一人あたりの茶葉消費量は徐々に伸びてきているものの、生産量の急増とはグラフの傾きが違うため、需給ギャップが大きくなっているのです。
このようなことから、政府方針としては、生産量はしばらく伸ばさず、六次産業化による茶業の高付加価値化などを行うことで、需要の増大を待ち、需給ギャップを解消する方向に進めたい意向のようです。

単純な需要と供給の調整であれば、価格を下落させるという方向に進むのですが、そうも行かない事情があります。
茶葉は農村経済を支える柱になっているところが多く、人件費や資材費等のコストアップ要因がある中で、価格が市場原理に従って下落してしまう事態になれば、政府方針である貧困撲滅・都市と農村の経済格差是正の実現が困難になります。
そこで、価格を下落させることなく、需要と供給を調整するという、きわめて困難な問題に2025年まで取り組むことを政府方針として決定したということです。
より分かりやすい表現をとれば、いわゆる”踊り場”を、2025年まで設定することを政府が決めたのです。

 

”踊り場”をどう過ごすかで、今後10年が決まる

さて、日本では”踊り場”と言うと、悲観的な見方をされることが多いものです。
「成長が止まった」というような見え方になることが多く、”踊り場”を避けようとする傾向も多く見られます。

しかし、経済成長や企業経営において、”踊り場”を作ることは、その後の成長には欠かせないことです。

日本の戦後の経済成長を例にとりましょう。
1960年代に年率10%を超えるような急成長を遂げましたが、成長の負の側面として公害など、多くの問題が発生していました。
これが1970年代のオイルショックなどを契機とした低迷の時期において、エネルギーの転換や公害の解消などに注力することで、その後の1980年代の安定成長時代に繋がりました。
オイルショックを景気とした低迷の時代を、高度経済成長で生じた社会の歪みの解消に充てることで、新しい成長曲線が描けたわけです。

”踊り場”というのは、本来、このような時期のことです。
オイルショックは外発的要因で作らざるを得なかった”踊り場”ではありましたが、本来は自主的に設けるべきステップです。
量的な成長を一時的に止め、質的な転換を行う方向にエネルギーを振り向ける、という期間なのです。
伸びきった脚を一度折り曲げて屈まなければ、次のジャンプは出来ないのです。

中国政府としては、今回の新型コロナウイルスの流行による経済停滞を、ある意味、良いきっかけとして活用しようとしているようにも見えます。

もっとも、問題になるのはこの時期の過ごし方です。
ここできちんと課題を解消し、その後の10年の成長路線をどのように描くかが出来なければ、中国の茶業も低迷期に向かってしまうことでしょう。
中国のいくつかの茶業団体は、昨年末にトップが交替するなど、新しい時代を迎えているので、そうした方々の舵取り次第では、有り得ない話ではありません。

このようなわけで、2025年までの期間は、どうも中国からも景気の良い話は聞こえてこないかもしれません。
しかし、景気の良い話があまり聞かれなくなる時期だからこそ、中国の茶業がどのように質的転換を遂げようとしているのかに目を配るべきなのかもしれません。

 

次回は2月16日の更新を予定しています。

 

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