第171回:「入門」と「基礎」の違いについて

「基礎」講座は簡単すぎる?

当社で実施している講座の中で、もっともベーシックな講座は「中国茶基礎講座」「台湾茶基礎講座」といったものです。
「基礎講座」という名前から、非常に簡単な内容であると思われることもあります。

「私は既に何年もお茶を飲んでいるから、基礎講座は必要無いだろう」
「別の先生のところで、学んだことがあるから必要無いだろう」

という反応は案外多いものです。

しかし、実際に受講いただいた方からの感想を伺うと、

「想像以上に内容が濃かった」
「今まで聞いたことの無い内容だった」
「混乱していたことが整理された」

と、なるケースが多くあります。

このギャップは、おそらく「基礎」という言葉の印象が大きく違うためではないかと推測します。

 

「入門」と「基本」そして「基礎」の違い

講座などで、「基礎」と似たような言葉に「入門」や「基本」という言葉があります。
この3つの言葉のニュアンスはどう違うのでしょうか?

一般的に、「入門」の方がより初歩的かつ平易な内容で、「基本」そして「基礎」の方がやや進んだ内容という印象があるかと思います。

これは多くのところで、共通している内容かと思います。

「入門」とは?

「入門」というのは、文字通り、「門」に「入る」ということですから、その世界にとりあえず入ってみる、ということを重視します。
中国茶でいうならば、

「まずは体験してみよう」
「簡単にお茶を淹れるところまでは、出来るようになろう」
「必要最低限の専門用語を紹介しよう」

あたりの内容になるかと思います。
実際、このような形の入門講座・お試し講座は、専門の教室だけではなく、中国茶専門店などでもよく開催されています。
また、イベントなどでの”ミニ講座”などで、よく展開されている内容です。

講師の力量的にも、そこまで多くの内容が求められることはないかもしれませんので、デビューしたての講師・インストラクターでも対応できるかもしれません。
しかし、その後にさらに勉強を積み重ねていくのであれば、その後に学ぶであろう内容との整合性がきちんと取られていた方が望ましいでしょう。
そうなると、それなりに深い内容も知っておく必要があります。

上記は一般的な「入門」のイメージですが、もし特定の流派のような形であれば「入門」とは「門下生になる」ということを意味するかもしれません。
その場合は、お手軽なイメージではないのかもしれません。
このへんは人によって語感の違いがありそうです。

「基本」とは?

「基本」というのは「基礎」と同じように用いられることも多い言葉です。

文字を分解してみれば、「基(もと)」となる「本(もと)」にすべきこと、となるかと思います。
まさに大本(おおもと)であり、何らかの物事を行う・知る上でのベースとなる内容というようなイメージかと思います。

今後何かを学んでいくのであれば、その前に知っておきたいこと、をお伝えしてくれる印象かと思います。
対象となるのは初学者が多いでしょうから、「基本」といえば、やはり初心者向けなのかな、という印象を持ちます。
そして、「基本」であるからには、簡単に学べそうな印象もあるかと思います。

しかし、実際には、新しい概念を学んだりする必要があるので、基本というものほど、きちんと伝えることが難しいものです。
何らかのプロの方でも、「基本が大事」という方は多いですし、それを正確に知ることは意外と難しいのではないかと思います。
「基本」=「簡単」という印象が強くなっているように感じますが、「基本」を突き詰めて行くと、どこまでも奥が深そうです。

「基礎」とは?

そして、「基礎」です。
「基本」と同様に捉えられることも多いのですが、字面が違います。
文字を分解してみれば、「基(もと)」になる「礎(いしずえ)」です。

「礎」とは、建物などが動かないようにしっかりと支える基盤のことですから、よりガチッとした印象があります。

とはいえ、「基本」と同様に初学者が対象になりますから、やはり簡単に学べそうなイメージも強いかと思います。

当社で言うところの「基礎」とは?

さて、当社で考える「基礎」ですが、「礎」という語感を強く意識したものです。
まさに、お茶を学んでいく上でのベースの知識をしっかり身につける。
建物で喩えれば、地中深くの地盤の安定したところに杭を打ち込んで、しっかりとした土台を作る、というイメージです。

残念なことに、中国茶に限らず、お茶に関する情報は正しいものばかりでは無く、不正確な情報も沢山流通しています。
そうした情報を目にしたとき、初学者の方ほど、正しいか誤りかの判断が出来ず、まずは丸呑みしてしまうことがよくあります。

そして、情報を集めれば集めるほど、矛盾する情報が蓄積されていきます。

「この本ではこう書いてあるのに、このお店の人は違うことを言っている」
「あの時聞いた話と今回の話は違っている」
「なんだか、よく分からない・・・」

という結論になってしまいがちです。
また、異なる論説を見た時に、不必要なほどに攻撃的な振る舞いとなってしまうこともあります。

こうした現象はなぜ起こるのか?といえば、まさにベースとなる土台の知識が曖昧・あやふやであるからです。
建物を建てることで置き換えると、基礎となる土台部分の施工が不十分で、しっかりと地面に食いついていない状態です。
このような状況なのに、上にどんどん構造物を乗せていけば、より不安定になっていきます。
あるいは、乗せられたとしても、建物全体が歪んでしまいます。

反面、土台の知識がしっかりしていれば、

「この記述は、明らかにおかしい。お茶の植物の特性を考えたら、有り得ない」
「この歴史の記載は、年代がずれているものを記載しているから、信用しにくい」

などのように、情報の真偽をある程度判断できるようになります。
誤った情報が多いからこそ、この判断基準を早く自分の中に作り上げることが、不正確な情報の多い環境を抜け出す良い方法では無いかと思います。

 

しっかりした知識の土台とは?

上記のような”基礎”を作るための講座が、当社で行っている「基礎」講座というわけです。
もっとも、実際にはどのようなことをしているのか?と疑問に思われるかもしれません。

それは説明をする際の”根拠”をより確実なものに結びつける、ということに尽きます。

たとえば、一般的な勉強法であれば、

「本に書いてあった」
「ネットに書いてあった」
「誰々さんが言っていた」
「自分で見てきた」

のようなものを参考にすると思います。
しかし、それが必ずしも正しいものであるとは限りません。
残念ながら、中国茶の業界は急速に変化しているので、旧来の書籍の情報ですら当てになりません。

そこでどうするか?ですが、

・科学的な内容(茶の植物としての特性、製茶における化学的反応)などに逃げずに取り組む
・公的な機関(ISO、国家機関、業界団体)などが定める定義・標準などを参考にする
・学術的に検証を重ねられた論文などを参考にする

など、できるだけ正確性が担保されているソースを基に講座を作るわけです。

もちろん、全てにおいて完全な検証が出来るわけではありません。
が、地盤に打ち込む杭の数がある程度あれば、土台がしっかりするのと同じで、ある程度、確実な知識と紐付いていけば、全体的にガッチリとした基礎になります。

このような内容を目指しているのが、当社の基礎講座というわけです。
これらを学ぶのはほぼ初めての方が多いので、それなりに時間もかかりますし、お伝えする説明能力も必要です。
また、それに見合う水準の教材も必要になりますので、相応の受講料となっています。

「そこまで求めていない」という場合は、入門講座になるかと思います。
当社の場合、「入門」に該当する内容は、運営しているWebサイトやYouTubeで十分に網羅していると考えています。
これらは全て無料で公開していますので、改めて入門講座を行うことは考えていません。

ただ、その内容をきちんと基礎として定着させるためには、相応の時間と適した教材が必要です。
その必要性を感じている方にとっては、学んでいただき甲斐のある講座になっていると思います。

 

次回は8月1日の更新を予定しています。

 

 

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