第175回:本場で中国茶を買う際に、ラベルでチェックすべきこと

最近、フリマサイトやネットオークションなどで中国茶を購入する方も出てきています。
しかし、それらの商品を見ていると、中国で定められている規定をクリアしていない商品というのも目につきます。
そうした商品の中には、品質もさることながら、食品としての安全性に疑問があるものも含まれている可能性があります。

これらを選択肢から外すためには、中国国内で流通するパッケージ済食品に記載するべき事項を押さえておくことも必要だと感じます。
このような情報は、あまり日本では広まっていないように感じますので、本日は、その内容について少しまとめてみたいと思います。

※今回の内容は、茶葉市場や農家などで量り売りをする場合にはあまり役立たないかもしれません。パッケージ済のお茶を買う際の参考にされてください。

中国では食品の製造には製造許可を得る必要がある

まず、大前提として、中国で事業者が茶葉などの食品を製造するためには、必ず「食品製造許可」を得る必要があります。
食品の製造は許可制であるということです。

ただ、これも法制度が変わってきていますので、少し経緯をお話しします。

かねてより、中国ではヤミの食品工場などが生産する、品質の低い食品が出回っていることがありました。
その中には、衛生面に問題のあるものや残留農薬や有害な物質などが混入していたものもあり、社会問題となっていました。
このような食品の安全性をどう担保するかということについて、中国政府側でも様々な規制を行ってきています。

QSマーク

まずは2004年から、QSマーク制度がスタートしています。
「QS」とは「Quality Safety」の略で、「食品質量安全許可証」を取得した企業だけが表示できるマークです。
根拠法となっていたのは、『工業産品生産許可証管理条例』となります。

QSマーク(初期は「生産許可」ではなく「質量安全」)

このマークが掲示されていれば、それは正規の食品製造許可を得た事業者の製品であるということです。
そして、このマークが無い食品は、流通させてはならないこととされました。
2004年から、様々な食品に段階的に導入がなされ、茶葉に関しては2006年頃から、QSマークが存在しない茶葉は流通が許可されなくなりました。

もっとも例外はあり、例えば茶葉市場などで量り売りで販売される場合は、このマークの掲示がなくても販売出来ます。
基本的に事業者側で予めパッケージ済の商品に対して、その販売の最小単位ごとにこのマークを掲示するという形です。

このような制度であったことから、現地で暮らす方にとっては、商品が正規の工場で生産されたものかどうかを判断する目安になっていました。
このマークが無いということは、正規の食品製造許可を得ていない工場(いわゆるヤミ工場)で生産された可能性があり、安全性リスクを孕んでいるということです。

しかし、この制度でも不十分な点はあり、マークの偽造なども発生していました。
また、21世紀に入ってからの食品安全に対する関心の高まりなどがあり、食品の規制は工業製品の管理とは別枠にする方向へ変わっていきました。

SC制度

2015年に『中華人民共和国食品安全法』が制定されます。
それに合わせて、『食品生産許可管理弁法』と『食品経営許可管理弁法』が制定され、『食品安全法』を根拠とした、SC認証が始まります。
SC認証とは「生産・ShengChan」のピンインの頭文字を取ったものです。
「食品製造許可」を得た事業者には、SCから始まる14桁の「食品製造許可証番号」が付与されます。
一企業に対して、一つの番号が割り当てられることや、生産許可証の更新が5年ごとになりました(QSは3年ごと)。

3年間の移行期間の後、2018年からQSマークは撤廃され、それ以降の生産品には全てSCから始まる番号が記載されているはずです。

 

パッケージ済食品に記載するべき事項

上記の「食品製造許可証番号」以外に、中国ではパッケージ済食品に記載するべき事項が決められています。
これを規定するのが、国家強制標準であるGB 7718『预包装食品标签通则』です。
これは強制標準とあるように、パッケージ済の食品のラベルに表示すべきことを規定しています。

その内容は以下の通りです。

  • 食品名
  • 材料リスト
  • 正味重量および構成
  • 製造者や流通業者の名称、所在地、連絡先情報
  • 製造⽇および保管可能期間
  • 保管条件
  • 食品製造免許番号 → SCで始まる14桁の数字
  • 製品基準コード → 参照した標準の番号

上記の内容が網羅されていない場合は、正規の食品として流通させてはならないことになっています。

実際に正規の商品を見ると、もれなく記載されています。

きちんと決められていることが表示されていないと、罰せられる場合やリコールの対象となる可能性もあります。
企業としては信頼問題になるはずなので、まともな事業者であれば、全て記載されているのが当然ということになります。

 

実際の商品選びにどう活かすか?

上記のような情報を得ておくと、商品選びの際に、ラベルの見方が変わってくると思います。

たとえば、著名産地(老班章や冰島)の名前を冠した普洱茶なのに、非常に安い。
しかし、ラベルと見てみると、生産者の住所が大ざっぱすぎたり、連絡先が不明な場合があったとします。

これは極めて、信憑性の低い商品であると言えるでしょう。
なぜならば、食品を製造する以上は商品に責任を持つわけですから、消費者などからすぐに連絡が取れるようにしておかなければなりません。
その義務を怠っているということは、端から「責任を負う気がない」わけで、やはり怪しげな商品だということになります。

実際、もし商品の内容がラベルなどとの記述と明らかに相違がある場合、地元の消費者ホットラインなどに連絡をすると、当局からの監査が入ることがあります。
その際に違反が判明した場合は、商品代金の10倍の金額で消費者から買い戻しを行ったり、食品製造許可が取り消されるなどのペナルティーが発生します。
表記義務違反は、信用問題に直結するため、きちんと正しく記載をする方向になってきています。

 

中国でも、きちんとした企業はきちんとした製品を生産するようになっています。
しかし、やはり今でも怪しげな商売を行う業者はゼロではありません。
そのようなリスクを避ける上では、上記のようなラベルの仕組みを知っていて損はないかと思います。

 

次回は10月1日の更新を予定しています。

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