台湾に来ております。
先日まで「現地視察会」として、博物館やお茶の問屋さん、そして茶農家さんへの訪問などを行っていました。
しばらくはコロナの影響もあって、産地を訪問するというのが難しかったのですが、最近は産地へ訪問する方が増えてきているようです。
産地を訪れる方が増えること自体は悪いことではありません。
しかし、中には農家の方等への過剰な負担が掛かるなどでトラブルになる、あるいは以後遠慮してほしいとなるケースもあるようです。
どういう問題が起こるのかについて整理し、そうならないための対策をまとめてみたいと思います。
※基本的には台湾のケースで紹介しますが、日本や中国でも当てはまることは多いと思われます。
生産者の多くは個人や家族経営
まず、大前提として持っておきたいことは、生産者の多くは個人経営であるということです。
多くの社員を抱えているわけではなく、家族経営のような形でされている所が多いです。
これはどういうことかというと、「もしお客さんが来たら、仕事の手を全て止めて、そこに掛かりきりにならなければならない」ということです。
大通りなどに店舗を構えている生産者なら問題にはなりにくいのですが、それでも長時間の拘束をされると厳しいと思われます。
アポイントを取ってから行くのであれば良いのですが、飛び込みで訪問するのであれば、場の雰囲気を読んで、少なめの滞在時間とするべきかと思います。
また、お茶を生産しているタイミングで産地を訪ねたい、という方もいますが、これは余程の関係性が出来ていない限り、お薦めできません。
製茶の時期は、とにかく人手が足りません。
家族経営ならなおさらで、そのような時期に訪ねられても、相手をしている時間がありません。
試飲対応やパッキングなど、時間がかかることばかりで生産者にはメリットがありません。
さらに烏龍茶は特にそうですが、萎凋や攪拌(做青)、殺青などはタイミングが命です。
仮眠を少しずつ取りながら、ほぼ徹夜状態で全力疾走している状況です。
どんなに人間ができている人でも、イライラすることもあるでしょうし、正常な状況ではありません。
自分自身に置き換えて考えてみると良いのですが、このようなときに客に来て貰いたいと思うでしょうか?
そこで言葉も通じない面倒な人たちが来たと考えたらどうでしょうか?
訪問するタイミングをくれぐれも間違えないようにしたいものです。
日本と台湾では商習慣が違います
トラブルが起きやすい点としてもう一つあげられるのは、購入する量です。
台湾の消費者の方でも、農家に訪問して直接茶を買っていく方は割と多くいます。
ただ、これらの方は、車で農家に乗りつけて、1年分のお茶をまとめてガサッと買っていく、というスタイルです。
ゆえに一般消費者でも平気で5斤や6斤、10斤(1斤は600g)くらいは買っていきます。
農家に来る、普通の台湾人の感覚はこのようなものなので、農家側の接客の対応も、この量に合わせたものになっています。
ところが、日本では中国茶や台湾茶は高価ですから、30gや1回分の5g単位というような形で売られています。
その感覚で、農家で買い物をしようとすると、最低ロットが4両150gからとなるだけでも負担です。
もし、沢山試飲をしても購入する量が、150gや300gでは農家は釣り合わないと感じてしまいます。
農家側の考える販売量とのギャップが大きすぎるのです。
この商習慣の違いを埋めるのは容易ではないので、ある程度の量を買う覚悟を持って訪問するか、何人かで集まって訪問する(一人ずつは少量でもトータルでは量になる)などの対策が必要です。
極端な例かもしれませんが、「さんざん色々なものを試飲し、茶園の見学や工場の見学などもさせられたのに、150gしか買っていかなかった・・・」では今後は日本人に来て貰いたくないと思われても仕方がありません。
きちんとアレンジをして行くのがお薦め
非常にネガティブなように聞こえるかもしれませんが、それでも生産現場を実際に訪ねるのは、とても大きな体験になり、そのお茶への理解度も増すことでしょう。
その地域やお茶のファンを増やすという面でも、産地を訪れるというのは、長期的に見て有益なことであるのは間違いありません。
実際、観光地として訪れられるように整備された場所もありますし、観光客を前提として買いやすいパッケージを予め用意している店舗もあります。
最初のうちは、このような場所を訪れていくというふうにした方が良いでしょう。
それでも、もっと生産の現場を知りたいということになると、こうした場所では満足できないかもしれません。
その場合は、そこには上記のようなギャップに加え、言葉の壁といったものも存在します。
そのようなハードルをクリアするためには、きちんと生産者の方と意思疎通ができ、生産者と訪問者の両方にメリットがある、いわゆるWin-Winの関係に出来るような方法を提案できるアレンジャーが必要になります。
たとえば、お茶を買う量は少ないが、茶園の案内などに体験費用を支払う等です。
お互いににこやかに納得して、「また来てね」「また来ます」と言われる関係性を作れるかどうかです。
そのようなツアーを組んでいる方もいらっしゃいますので、そうしたツアーに乗っかっていくのも悪くない選択肢だと思います。
※それでも、この種のツアーが最近はお気楽に組まれており、あとから生産者の方から苦情を聞かされることもまた多いのですが・・・
いずれにしても、「郷に入れば、郷に従え」という旅の基本を押さえて訪問したいものです。
次回は6月16日頃更新します。