第101回:心配される中国の豪雨と水害

今月11日にWebサイトがリニューアルされました。
このブログも101回目となりましたが、今後も引き続き消費者目線、コンサルタント目線の記事を書いて参ります。

観測史上最多の雨量を記録している中国

日本でも梅雨前線の影響などで、大雨や水害に見舞われています。
今年は特に降雨量が多いのですが、この雲は中国大陸からやって来ており、中国大陸でも広い範囲で大雨をもたらしています。
特に今年は中国では梅雨入りが早かったこともあり、観測史上最多の雨量を各地で更新しています。

大雨によって、水害や土砂崩れなどの被害も相次いでいます。
人民網日本語版の6月末の記事を引用します。

統計によると、6月以来、南方エリアの広西壮(チワン)族自治区、貴州省、湖南省、四川省、江西省などの省(区、市)で発生した洪水の被災者が延べ1216万人、死者・行方不明者が78人に達し、72万9000人が緊急避難した。倒壊した家屋は8000棟以上、9万7000棟が損壊した。直接的な経済損失は257億元(1元は約15.15円)に達している。

http://j.people.com.cn/n3/2020/0629/c94475-9704945.html
人民網日本語版より

さらに、7月に入ってからは長江の水位が上がり、長江流域でも7月3日に今年最初の洪水が発生しました。

人民網日本語版7月3日付:長江「2020年第1号洪水」が上流で発生、下流の江蘇で警戒態勢

7月9日には福建省武夷山で集中豪雨があり、風景区が浸水により全面的に閉鎖されました。

人民網日本語版7月10日付:武夷山景勝地が豪雨による浸水で全面閉鎖へ 福建省

その後も雨は降り続き、長江流域の各省で被害が拡大しています(冒頭の写真は江西省九江市を流れる長江です)。

たとえば、江西省九江市にある中国最大の淡水湖である鄱陽湖の面積は、平年よりも約25%拡大しています。
面積が拡大するというのは、沿岸の低地も湖になってしまった、ということです。

江西省景徳鎮市でも市内が水に浸かるなどの被害が発生しています。

被害はまだ拡大中

人民網日本語版の7月14日付けの記事を引用すると、

国家減災委員会秘書長で応急管理部副部長の鄭国光氏は、「6月以来、長江流域の平均降雨量は1961年以来最高となっている。西南などの地域では何度も山津波や土砂災害が発生しており、一部地域の中小規模ダムや中小河川堤防で危険な状況が発生している。現時点で、すでに累計で延べ224万6千人が緊急避難した。27省(自治区・直轄市)で延べ3873万人が被災し、死者・行方不明者は141人、倒壊家屋は2万9千棟となっている」と述べた。

http://j.people.com.cn/n3/2020/0714/c94475-9710381.html
人民網日本語版より

この記事にあるように、半月ほどで、被災者の数が1216万人から3873万人へと3倍以上に拡大しています。

長江流域では、そろそろ前線が北上して雨量のピークを越え、7月後半からは水位は落ち着くと見られています。
しかし、長江流域はなかなか水が退かない地域でもあるため、河川や湖沼に近い地域では復旧に時間を要しそうです。

今回の豪雨は多くの茶産地を直撃

今回の豪雨は中国の南部が中心ということで、多くの茶産地に影響が出ています。
貴州省などの山間にある産地は土石流の発生などが起こっています。

また、湖や川に面したところにある産地は、影響が避けられません。

たとえば、湖南省岳陽市にある洞庭湖の水位が上がっています。

洞庭湖に浮かぶ君山島は黄茶の代表格である君山銀針の産地です。
現時点では影響などは報じられていませんが、長江の水位と連動する湖ですし、今後も長江はしばらく水位が上がる予測もあり、心配されるところです。

また、江蘇省の太湖も水位が上がっている湖の一つであり、この湖の中には洞庭碧螺春茶の産地である東山、西山があります。
さらに沿岸には多くの名茶のある無錫市、浙江省側には顧渚紫笋茶などの産地である湖州市長興県、さらには茶壺の産地である宜興などもあります。

もう一つの視点として、お茶の集散地が河川のそばにあることも挙げられます。
伝統的に、お茶は水運を利用した輸送を行っていましたので、重要な茶の集散地が点在しています。
実際にその被害は出ており、安徽省黄山市では、茶葉会社が水没し、大きな損害が出ています。

安徽省の茶葉会社、3000トンの茶が水に浸かる

 

日本と違い、被災地の窮状などはあまり詳細に報じられないのが中国の報道です。
不安感や対策の失敗などが政府批判などに向かってしまう可能性があるため、そのような報道はあまりされません。
そのため、なかなか被害の全貌が掴みづらいのですが、注意深く見守って行きたいと思います。

 

次回は8月1日の更新を予定しています。

 

関連記事

  1. 第54回:情報バランスの偏りを見直す

  2. 第161回:高山烏龍茶を購入できるお店が減った?その理由と対策を考察

  3. 第155回:大規模なお茶イベントを、どう復興させるか

  4. 第20回:国家標準で定義された「六大分類」

  5. 第67回:中国の「茶旅」の現状報告(1)峨眉雪芽茶業

  6. 第169回:久しぶりの台湾取材。どのような取材をしているか?

無料メルマガ登録(月1回配信)