第124回:中国の第14次5カ年計画で示された茶業の方向性

新しい5カ年計画がスタート

中国では、2020年で第13次5カ年計画が終了し、2021年から第14次5カ年計画がスタートしています。
「未だに5カ年計画というのを立てているのか」と思われるかもしれませんが、中国の社会主義市場経済では、5カ年計画も引き続き立案され、それが政策にも色濃く反映されています。
もっとも、従来の「計画」から比較すると、政府が立案する大まかな目標設定という位置づけに変わってきています(訳語も従来のplanからguidelineに変更)。

いずれにしても、5年という期限を切って、計画を立て、その進捗を管理していくという流れで中国の政治・経済は動いており、そこで発表される内容は、業界に大きな影響を与えます。
中国の茶業界の動向を考える上では、5カ年計画の内容は必ず踏まえておくべき項目でしょう。
中国の調査機関である中商産業研究院が、第13次5カ年計画の成果を振り返りつつ、第14次5カ年計画での茶業界の推測を発表していましたので、その内容をご紹介したいと思います。

 

5年間で産量は231万トンから297万トンへ

2016年から2020年までの第13次5カ年計画下で、中国の茶業は安定的に成長しています。
生産量に関していえば、2016年は231.33万トンでしたが、2020年には297万トンに増加。約3割の伸びを示しました。

一方、国内販売量の方でも、消費拡大が続いており、2016年の171.06万トンから2020年には220.16万トンと、こちらも約3割の伸びを示しています。


輸出については、2016年の32.87万トンから、2019年には36.66万トンにまで伸びていましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受け、34.88万トンに留まり、計画期間中の伸びとしては微増となりました。
金額ベースでは、2016年の14.85億米ドルから、倍増を目指す計画でしたが、パンデミックの影響も受け、2020年には20.38億米ドルと大幅な未達になっています。

茶園面積は、方針として全国の茶園面積を4200万畝前後に抑え、茶園の改良による効率化を進める計画でスタートしていました。
2016年の総茶園面積は4454万畝であったのに対し、2020年は4747万畝となり、そのうち摘採面積は4152.8万畝となりました。
茶園の面積拡大は続く見込みですが、その伸びは鈍化し、生産能力過剰を抑える方向に舵を切っています。

この5カ年計画の内に重要な政策がいくつか打ち出されており、
・食品の安全性確保(残留農薬基準の引き上げ等)
・貧困地区などでの茶業の振興
・地域ごとの特色ある農業の奨励(茶旅との融合を含む)
・電子商取引の支援
・強力なブランドの育成
などが挙げられ、これらは第14次5カ年計画でも引き続き実施される見込みです。

 

第14次5カ年計画の方針

今年からスタートしている第14次5カ年計画は、結党から100周年を迎えた中国共産党の次の100年の礎の計画として、重要な計画であると位置づけられています。
国内に生じている様々な矛盾(貧困の撲滅など)や国際社会の変化に対応し、旧常態から新常態への対応を行い、急成長から品質の高い成長を目指すとしています。

茶業においては、地元の特色ある産業(旅行産業などを巻き込んだ茶業の高度化)として育成し、農産品の電子商取引のプラットフォーム整備を行うことが掲げられています。
また、「海のシルクロード」「万里茶道」の世界遺産申請と各地域での特色ある名茶の確立、及び高度加工品への展開などにも触れられています。

具体的な戦略として以下のような項目が示されています。

産業の高品質・高効率化を図る

もっとも大きなテーマとして、茶業自体の高品質化・高効率化が掲げられています。
茶業の生産現場のスマート化や機械化水準の向上、機械設備などのレベルアップ、それぞれの地域や種類に合わせた高効率な機械の導入など、機械化の側面。
さらにモノのインターネット(IoT)、5G、ビッグデータの活用やトレーサビリティーシステムの導入による産地から茶杯までの安全と品質管理システムの構築なども挙げられています。
ブランド化による付加価値の向上も挙げられ、国内外で影響力を持つブランドの育成も目指すとしています。

茶旅の融合

地元の資源を活かすための方策として、茶業と旅行やレジャーなどの観光産業との結びつきをより強化することも特に掲げられています。
茶園の観光だけで無く、地元の観光資源の活用などで、地域経済により大きな波及効果を生むように求めています。
地域の観光資源を結んだ推奨観光路線の提示やサービスの管理システムなどの構築も各地方に求めるようです。

 

2025年の推計産量は377万トンに

このように、中国の茶業界は急速な生産拡大から、より高品質で高効率な茶業を目指しつつ、産業の範囲を観光業なども含めたより大きな領域へ拡大していく方針が示されています。
特に茶業はとりたてて有力な産業は無く、自然の豊かさぐらいしか売りが無かった地域に産業を産み出す可能性を持った産業であることから、貧困地域などへの拡大は進んでいくものと思われます。

消費量の伸びは国内においては所得水準の上昇などで、ある程度の伸びが見込まれますが、それ以上に生産能力を有している状態です。
今後は輸出へ力を入れていきたい方針が国としてはあるようですが、高額な茶葉はなかなか海外では販売するのに苦戦している状況です。
これを打破するために、中国茶文化の輸出という方向性が示されたり、あるいは一帯一路の流れから海のシルクロードや中央アジア各国への輸出を強化する意向です。
しかし、そう簡単には進まないものだと思われますので、既に認知が進んでいる国際的な抹茶市場を取り込む方向に進んでいく可能性が大きく、そうなれば日本の茶業にも少なからず影響は出ることでしょう。

いずれにしても、中国は計画を立てると、それに従って確実に実行してくる国ですし、そうしないと幹部の首が飛ぶという体制の国ですから、上記の計画は間違いなく実行され、5年後には全然異なった状況になっているかと思います。

 

次回は8月1日の更新を予定しています。

 

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