急拡大する中国の電子商取引

中国では、オンラインストア(電子商取引)の躍進が著しいと言われています。

それを象徴的に表しているのが、毎年過熱化している「独身の日」の商戦です。
11月11日で「1」が4つ並ぶことから「独身の日」とされ、自分のためのご褒美という名目で、ネットショップが大きなセールを行います。

今年、電子商取引大手のアリババ傘下のモールでは、1682億人民元(約3兆円)の総取引額を、僅か24時間でこなしたとのことです。そして、その取引の90%はモバイル端末を通じたものだったと発表されています。
同じく大手モールのJD.com(京東商城)では、「独身の日」の24時間で、1271億人民元(約2兆円)の総取引額があったと発表されています。

中国でもネットを通じた商取引が、活発であることをよく示す数字だと思います。
特に、「独身の日」というネーミングに見られるように、若年者層のネットを通じた商品の購入は、もはや日常の風景となっています。

 

多くの茶葉ブランドがオンラインモールに出店

このようにネットを通じた取引が活発になっていることは、茶業にも影響を与えています。

まず、有力な茶葉メーカーの多くは、自社ブランドの直営店(旗艦店)を大手のオンラインモールに出店しています。
購入側にとってみれば、オンライン取引は顔が見えないという不安感もありますので、名の通ったブランド、それも会社の直営店舗であれば、品質的に安心であろうという意識が働きます。

さらに、こうしたブランドの多くは、微信(WeChat)で公式アカウントを設け、積極的に産地の情報やお茶に関する知識を提供しています。
茶産地に根ざした豊富な情報や知識を与えていくことで、顧客に対しての自社の製品の説得力や信頼感を増していこうとしています。

企業側にとってみると、顧客の新規開拓こそが課題です。
従来型の実店舗を通じた流通では、近隣に自社の代理店や取扱店舗が無い限り、自社の製品を販売することは叶いませんが、ネットにその制約はありません。
さらに、オンラインストアは、特に若年層に支持されていることから、こうした若年層の顧客を増やしたいと考える茶葉ブランドにとっては、既存の販路を補完する大事な販路になりつつあります。
自社製品を少量ずつセットにした、お試しセットや武夷岩茶の生産メーカーであれば、著名な産地の肉桂をまとめた「全肉宴」セットを売り出すなど、様々な取り組みを行っています。

 

値頃感を追求する異業種参入組も

オンラインショップには、メーカー直売のお店もありますが、オンラインでの茶葉販売に商機があると見て、参入する個人や小さな企業も無数にあります。
むしろ、こうしたお店の方が実際には多く存在していると思われます。

こうした企業は、値頃感を武器に市場に切り込んでいく傾向が強く感じられます。
名の通った著名な名茶でも、1斤数十元ぐらいの値付けをしている店舗もあり、激安を武器に消費者にアプローチしています。
品質に自信があるとする実店舗に行くと、このような価格で販売されていることはまずありませんから、非常にお得だ!と感じて、ネットで他のものを買うついでに、ものは試しに・・・と買う顧客も相当数いると思われます。

生産者が直で販売しているわけでもないのに、このような激安の名茶を、しかも様々な産地の名茶を取り揃えることが何故できるのか、少し不思議だったのですが、その理由の一端を安渓で見つけました。

 

ネットショップ向け茶葉卸の存在

安渓きっての交易市場である、中国茶都をあちこち歩いていたら、このような看板の卸売り店舗を見かけました。

ネットショップ向けに1斤30元以下の様々な名茶を卸します、とあります。
鉄観音、本山、黒烏龍、金観音、紅茶、緑茶、白茶、花茶と、なんでも揃うことを謳っています。

「こんな価格で本当に揃うのか?」とも思いますが、鉄観音を例にとれば、中国茶都に農家が持ち込むような荒茶の中には、1斤10元や20元で取引されているものもあります。それを精製し量販を前提に値付けをするのであれば、決して不可能な価格では無いと思われます。

なにしろ、「ピンからキリまで」の幅が絶望的に広いのが、中国という国です。
ただ、その茶葉の原産地が安渓であるのか、本当に鉄観音品種なのか、季節はいつなのかなどは、怪しいものも含まれているかもしれません。
もっとも、値段の安いお茶でも、最近は機械化などの効果で”それなり”には作られていますから、最低限の品質はあるのかもしれません。

こうした茶葉を仮に1斤30元で仕入れたとすれば、ネットショップで送料込み1斤100元以下の価格で販売しても、十分に採算には乗るわけです。
あとは量を販売できるよう、ネットでの目立たせ方(写真の撮り方、ページの作り方、広告の打ち方等々)が巧みであれば、それなりに商売にはなってしまうと思います。

なにしろ、中国においてネットでモノを販売することは、上り坂のマーケットなのです。
お茶の目利きができるとか、顧客の信頼感をつくるとか、時間や手間のかかることをしなくても、宣伝さえ上手なら、それなりに売れてしまうのです。
もっとも、そういう商売が長続きするかどうかは分かりませんし、将来的に茶業に暗い影を落とす可能性もありますが・・・
※なお、こうした卸売り店舗では、農薬残留の確認や証明書取得に対応できないので、日本への輸入は難しいと思います(食品の輸入は簡単ではありません)。

 

 

次回は、12月11日の更新を予定しています。