ここ数年、中国を訪れる度に気になっていることとしては、お茶の広告が非常に増えていることです。
以前も多少は広告を見ることはありましたが、最近はその頻度が多くなり、また非常に目立つ看板・広告が増えています。

行きの機内から

今回は、理由あって、福建省の厦門航空を利用しました。
さすがに中国有数の茶処である福建省の航空会社だからか、席に着くなり目の前にお茶の広告がありました。

华祥苑(華祥苑)という、福建省の安渓を本拠地とする大手の茶業者の広告です。
同社は1993年の創業ですが、急ピッチで店舗網を広げ、空港などでも店舗をよく見かけます。 Webサイト(中文)
「国茶」ということで、国の外交用の贈答品などにも用いられたことなどをPRし、ブランドイメージを高めるとともに、代理店の募集も行う狙いの広告であるようです。
飛行機や高速鉄道などの利用者は、比較的ゆとりのある方やビジネスマン、経営者などが多いからか、このような代理店募集の広告をよく見かけます。

機内誌を手に取ってみますと、こちらはさらにお茶の香りに溢れたものでした。

建盞(けんさん)が帰ってきたという特集です。
いわゆる天目茶碗で、生産が再開され、産業として大きくなりつつあるという特集が組まれていました。
直球ど真ん中のお茶の特集号のようなものなので、武夷星、品品香などの大手の茶業者が広告を掲載しています。
表紙の下の部分には、こちらもまた福建省・安渓が本拠地の大手茶業者である・八马茶业(八馬茶業)の広告が入っています。 Webサイト(中文)

さらには、厦門で開かれている国際茶葉博覧会の紹介も、見開き2ページで出ています。

さらに、厦門航空の機内では、茶飲料ではなく、機内で淹れた温かい烏龍茶も振る舞われます。

このように徹底して、お茶の広告宣伝がなされています。
福建省の航空会社なので特殊なケースだと思われるかもしれませんが、大手航空会社の中国国際航空、中国東方航空などでも、あちことに茶の広告が溢れています。
特に気にはしない、という乗客が多いでしょうが、それでも多くのお茶の広告に無意識のうちに触れているわけで、潜在的な意識レベルには何らかの影響を与えていることでしょう。

 

地下鉄でも

高級な乗り物である飛行機だけの話では無いか、と思われるかもしれませんが、一般的な公共交通の中でも、お茶の広告は溢れています。
たとえば、こちらは上海の地下鉄10号線の車内です。

浙江省の西湖龍井茶のメーカーが、吊革広告を提供しており、一両をまるごとジャックしています。
「一芽一葉」、「獅峰山脈」のような少し専門的な用語がシンプルに書かれていて、QRコードが添えられているイメージ広告に近いものです。
が、一般市民の日常の足である交通機関で繰り返し目に触れるわけですから、これも当然、一般市民のお茶に対するイメージ形成にはそれなりの影響を与えていることでしょう。

このほか、駅の構内でも、お茶の看板広告などは目にします。
こうした広告が次々に出てくると、自ずと茶業界の活気を感じることになり、市民の茶に対する意識も変わっていくことでしょう。

マスに対しての広告というのは、かなりコストがかかるものではありますが、そこに徹底して投資を行い、市民の意識を変え、市場を創出していこうという中国の茶業界の強い意思を感じます。

 

日本で見かける広告は・・・

翻って、日本国内で見かける茶の広告はどんなものがあるでしょうか?
リーフティーの広告というのは、静岡の空港や駅などに行けば見かけることはありますが、東京や大阪などの大都市で見かけることは稀です。

多くのものは、大手飲料メーカーが出している茶飲料の広告ではないでしょうか?
テレビコマーシャルで流れるのも、ほとんどが茶飲料のものです。

広告宣伝費といえば、日本の長らく続いたデフレ環境下においては、無駄な費用であり削減できる費用として、真っ先に削られてしまうものでした。
が、本来、広告宣伝費というのは、既存の顧客に対してのメッセージを伝え続けるものであるとともに、新しい顧客を生み出すために必要なものです。
ある意味、顧客を作っていく、”種まき”を行うための費用であったのです。

本来、顧客というのは、自然に生まれてくるものでは無く、業界側がこうした”種まき”を行うことによって、生み出されるものなのです。
中国の茶業界が、いささか過剰とも思える広告宣伝費を積み上げて、懸命にそれを行っているのは、市場を大きくしなければ、需要と供給のバランスがとれなくなってしまうことを恐れているからでもあります。

 

茶飲料のシェアがどんどん増え、リーフティーのシェアは落ちるばかり・・・というのが、日本の茶業界の課題である、とされています。
それは不思議なことでも何でも無く、日本の茶業界全体として、長らく広告宣伝を軽視しすぎたゆえの当然の報いであると感じます。
たくさん広告宣伝をしている茶飲料は伸びているわけですから、消費者は本当に正直なのです。

じゃあ、リーフティーも宣伝を打てば良い!となりますが、現在の茶価の水準では、その費用の捻出は難しいことでしょう。
現在の茶価は、広告宣伝費をほぼゼロに近い数字にすることで辛うじて成立する価格だからです。
日本茶は必要以上に安すぎるのです。

本来あるべき姿としては、広告宣伝に必要なコストをきちんと織り込んで適切な売価設定を行う必要があります。
そのような価格設定になった場合、並べていれば黙っていても売れるような商品ではなくなることでしょう。
消費者の方にどうやって価値を感じてもらうかを、真剣に考えて、プロモーションをする努力をし続ける方にしか売れない商材になると思います。

その覚悟がある茶業者だけが新しい市場を作れるのではないでしょうか。

 

次回は7月31日の更新を予定しています。