第50回:上海のスターバックス リザーブ ロースタリー

上海では、昨年オープンしたスターバックスの新しい旗艦店、スターバックス リザーブ ロースタリーに出かけてきました。
焙煎所を兼ねた大型店舗で、シアトルの1号店に続いて、世界での2号店が上海の店舗です。
3号店はニューヨーク、4号店は2018年12月に東京の中目黒にオープン予定とのことです。

嗜好品飲料という点で、コーヒー業界の動きは茶業界に通じるところもあると思いますので、店舗の様子と印象を少しご紹介したいと思います。

中心部にある一棟の大型店舗

上海の中心部・南京西路にあります。中心街にもかかわらず、一棟まるごとの単独店舗です。
店舗は重厚な大きなドアがあり、スタッフの方が開けてくれます。
コーヒーショップというよりは、高級ブランド店のようです。

入口付近にはコーヒーとチョコレートのテイスティングカウンターがあり、さらにこの店舗の目玉である巨大な焙煎設備があります。

このほか、その場で焼き上げるベーカリーや多数のエスプレッソマシーンを配したメインカウンターなどが配されており、タンブラーやマグカップなどのグッズなども充実しています。

ドリンクやフードのオーダーは、スタッフに声を掛けて行う形式。
多くの方がスマートフォンでの決済を行っていましたが、もちろん現金も使用できます。
指定されたカウンターで商品を受け取る流れです。

通常のコーヒーもありますが、趣向を凝らしたアレンジコーヒーなどもあります。
価格は、比較的割高で知られる中国のスターバックスの中でも、さらに高価格路線です。

こちらのアイスコーヒーとチーズケーキで、150元(約2500円)ほど。
それなりのレストランで、豪華なディナーが楽しめる程度のお値段です。
この価格をどう考えるかですが、この日は平日にもかかわらず、ほぼ満席の状態が続くなど、売り上げは好調のようです。

2階にはTEAVANAも

2階は、アルコールなども提供しているカウンターとTEAVANAのカウンターがあります。
それぞれのカウンターでは、ちょっとしたミニ講座やテイスティングイベントなども行われていたようです。

吹き抜けになったフロア中央部では焙煎作業の様子を眺めることができ、大きなボードには提供中のコーヒーのスペックが次々に掲載されていきます。

お茶の観点では気になるのは、TEAVANAのコーナーです。
メインとして推しているお茶は、やはりハーブティーや花やフルーツをブレンドしたお茶です。
「茶」ではなく、「TEA」を押し出している姿勢を感じます。

通常のリーフティーはダージリン、安渓鉄観音、安吉白茶のみの品揃えでした。

お茶のサンプルと価格を確認しましたが、品質に比して、一般の茶葉小売店よりも、かなり強気の価格設定になっていました。
一応、一定の品質水準は確保できているようですが、さすがに飛ぶように売れているわけではないようです。
ハーブティーやブレンドティーに注力しているのは、より売りやすく、収益を上げやすいからでしょう。

茶器についてはTEAVANAオリジナルの茶器の他、marimekkoやキントーなどのブランドとコラボした商品なども並んでいました。
いずれも、いままでの茶器よりもスタイリッシュで新しい価値観を提案するものが多くなっています。
価格については、やはりかなり高級路線です。

 

とにかくカッコイイ店舗

店舗の全体的なイメージは、「とにかくカッコイイ」という、一言に集約されます。
内装や照明、置かれている商品や備品、スタッフに至るまで、全てがデザインされている店舗という印象で、まさに旗艦店(フラッグシップ)です。

スターバックスらしいブランディングの見本のような店舗であり、中国市場を重視している同社が、ロースタリーの2号店を上海に構えたのは、大いに意味があることだと思います。
そして、この店舗フォーマットは、上海だからこそ成立している店だと思います。他都市では、この客単価や来客数を確保するのは難しそうです。
※ざっくばらんな言葉で言えば、上海人は他の地域の中国人よりも、ええカッコしいなところがありますし、それに憧れるお上りさんの多い地域でもあります。

スターバックスは、2022年までに中国全土で6000店舗を展開し、現在の3倍以上の売上を上げることを計画しているようです。
しかし、街の中にありふれた店舗となった時に、これまでのような高級路線のイメージを維持し続けることは、おそらく困難であると思われます。
最近は地元資本のスタイリッシュなコーヒーショップも増えてきており、決して無風の市場ではありません。
事実、2018年4月~6月の既存店売り上げは2%減少に転じるなど、その兆候は徐々に表面化しています。

それを見越して、高級路線のリザーブやロースタリーを投入していくということだと思われますが、狙い通りに進むかどうか。
巨人ともいうべき企業であっても、嗜好品飲料という水物の世界は、なかなか一筋縄ではいかないようです。

 

次回は8月10日の更新を予定しています。

 

関連記事

  1. 第37回:流通インフラとして重要な茶問屋・茶卸

  2. 第45回:1kg68万元の普洱茶のニュースから考える

  3. 第67回:中国の「茶旅」の現状報告(1)峨眉雪芽茶業

  4. 第31回:新しい茶文化を創る好機は「今」

  5. 第98回:コロナによる販売不振局面をどう乗り切るか

  6. 第169回:久しぶりの台湾取材。どのような取材をしているか?

無料メルマガ登録(月1回配信)