中国や台湾に出かけてお茶屋さん行ってみると、共通して感じることがあります。
それはパッケージの進化という点です。

パッケージ専門店が増える中国の茶城

中国の茶城に行ってみると、以前よりもパッケージなどの包材の専門店が増えています。
茶葉店だった場所が、パッケージ業者のショールームなどに入れ替わっているケースもよくあります。

以前はこの手のパッケージ業者は、名茶の名前を大書したものや垢抜けない紋様のパッケージ、クオリティーの低いお茶の缶を扱うことが多かったように思います。
しかし、最近はこの手の店で扱っている既製品ですら、日本人の目から見ても、かなり優美でスタイリッシュなパッケージが増えています。

当然、このようなパッケージのコストは、以前よりも高くなっているはずです。
旧来の茶業者からは、「そんな見栄えにこだわるよりも、お茶の品質にお金をかけるべきだ」という声もあるのでしょうが、こうした店舗が茶城の中に続々と増殖しているということは、それだけ今の中国の茶業界がパッケージへの意識とかけるお金を増やしていることを意味しています。
特に中国の高級茶は贈答品として用いられることも多いため、この傾向は理解できます。

ブランド化の一翼を担うパッケージデザイン

とりわけ著名なメーカーは、特に”ブランド化”という視点を強く持っていることから、オリジナルデザインのパッケージを使用しています。
高級茶は贈答品として用いられることも多く、高額になることもしばしばです。
その価格に見合ったパッケージを採用することで、さらに商品価値を高めようというわけです。

この試みも、以前であれば、無駄に絢爛豪華な陶器の缶に入れてみたり、あまり趣味の良いものではありませんでした。
しかし、昨今ではそうしたものは”趣味が悪い”と購入側からも敬遠されており、最近はシンプルながら、品位や文化度の高さを感じるデザインも増えています。
実際、中国の検索サイトで「茶包装」などのキーワードで画像検索を行うと、かなり優秀なパッケージを見ることができます。

各メーカーにとっては、お茶そのものの品質を高めることはもちろんですが、パッケージの品質を高めることで、贈答品としてのトータルな付加価値を高めようとしているわけです。
とりわけ、最近は「小罐茶」のような、パッケージや販売方法で躍進する茶業者が出ていることから、パッケージに注意を払うことが増えているようです。

 

台湾でもスタイリッシュな路線が増加中

台湾でも同様の傾向があります。
その様子が非常に典型的に見られるのが、台北でも近年、おしゃれなスポットとして注目を集めている、松山文創園区にある茶葉店やお茶カフェです。
松山文創園区は、日本統治時代に建設され、戦後も引き継がれたタバコ工場の跡地をリノベーションした施設です。

近年、台北では昔の建築物をリノベーションして、文化空間として活かす動きが続いています。
松山文創園区もその1つで、特に緑と芸術の空間という位置づけがなされており、ギャラリースペースでは台湾だけで無く、世界的なアーティストの展示会なども多数開催されています。
ミュージアムショップのような形で、デザイン性に優れた雑貨類などが販売されているのですが、お茶もスタイリッシュな小ぶりのパッケージに入って販売されています。

また、2019年9月下旬に東京・日本橋にも進出予定の「誠品生活」が同所内にあります。
この3階フロアは、書籍とカフェゾーンとなっているのですが、台湾の特産品ということからか、お茶のカフェや販売業者も出店しています。

ここに入居している店舗は、伝統的な茶業者であっても、非常にスタイリッシュで若者向けに振った展開を行っています。
本格的なお茶を提供するティースタンドがあるほか、小ぶりなパッケージに入った、若い世代の贈り物にも最適と感じられるようなお茶のギフトボックスなどを販売しています。
どちらかというと、実験店舗の意味合いが大きいようですが、カフェなどに流れていた若者市場をデザインの力で呼び戻そうという意気込みが感じられます。

デザインの力で農産品の付加価値を高める

松山文創園区には、国が運営している財団法人の台湾デザインセンターが入居しています。
同法人は、国家的にデザインの力でさまざまな業種をバックアップすることを目的として、設立された法人で、様々な業種にデザインのコンサルティングなどを行っています。
先週末、同法人の農産物担当の方にお話を伺ってきました。

それによると、「台湾には高品質な農産品があるのに、その知名度が低い。そこをデザインの力でバックアップしようとしている」そうです。
台湾の特色のある農産品である、お茶も重点的に取り組みを行っているとのことで、誠品生活に入居している茶業者のほか、いくつかの茶業者のクライアントも抱えているとのことでした。

パッケージとブランディングの関連性は非常に深く、デザインの力によって新しい消費者層を開拓することなどは、よく相談を受ける内容のようです。
日本市場への進出なども関心を持っている茶業者は多いとのことでした。

手がけたいくつかの製品を実際の売場で見ましたが、やはりパッケージに優れた商品は、お茶についてあまり詳しくない方でも手に取ってみたくなるものです。
デザインによって、新たな消費者層を開拓したり、農産品そのものに付加価値をつけることは、大いに可能性があると感じました。

商品、パッケージも含めた購買体験の最適化を

以前であれば、「パッケージだけは見栄えがするけれども、中身は・・・」ということも多々ありました。
しかし、”購買体験”という観点に立てば、顧客が購入するのは、中身の商品そのものだけではありません。
商品のパッケージであったり、購入する店舗での接客、あるいは巷で流れる宣伝なども含め、顧客が目にしたり耳にしたりする全ての体験を購入しているわけです。

そのような観点に立って、自社のお茶を定義している茶業者が中国や台湾では増えているように感じます。
当然、このような販売の仕方をするとなれば、商品の原価と販売価格の構成を見直す必要もあるでしょうし、値付けも見直す必要があります。
茶価の向上というのは、このような見直しを行ってこそ実現できるものでは無いかと感じます。

 

次回は7月31日の更新を予定しています。