2017年より、ブログ「消観茶論」を開始します。
ブログ名の由来
勘の良い方はすぐにお気づきかと思いますが、宋代の徽宗帝が著したとされる『大観茶論』が元です。
徽宗帝のように「大」きく「観」るというような偉そうなことは言えませんので、あくまで「小」さく。
そこから転じて、「消」費者の立場から見たお茶のあれこれ を記すブログという趣旨としました。
消費者の立場から、茶業界を見てみると、色々と不都合な点があります。
そうしたものを様々な例を挙げながら、あるときは問題提起し、あるときは解決の方向性などを提示していきたいと思います。
毎月10日・20日・末日の月3回更新を予定しています。
今回は初回ですので、このブログで書き記していきたいことについて、大まかにご紹介します。
消費者の立場から見ると、お茶は”よく分からない”もの
お茶は、知れば知るほど、きわめて難解な面を持った飲料です。
そのため、かつては専門家ほど消費者に多くの情報を与えない傾向がありました。
そんなに多くの情報を与えても、消費者が混乱するだけだろう、という配慮があったのかもしれませんし、説明するだけ無駄だと思っていたのかもしれません(消費者側の知識があまりにも不足していて、とても店頭などでコンパクトに説明しきれるような状況ではなかった)。
消費者の立場に立ってみると、お茶を選ぶための判断基準・モノサシがないため、いざ、選ぼうと思っても、何が良いモノなのかを知る術がありません。せいぜい、目安になるのは値段ぐらいです。
でも、「100g500円と1,000円、3000円のお茶の何が違うのか?」と専門店の店主に問いかけても「グレードが違う」程度の返答しか返ってきません。これでは全く選択の参考になりません。
いきおい、よく聞くワードである「新茶」「やぶきた」「深蒸し」「静岡」「宇治」あたりを繋ぎ合わせて、なんとなく分かった気分になって購入する、という程度の消費行動”しかできなかった”というのが正直なところだと思います。
このような情報が少なく「よく分からないもの」に、消費者が多くのお金を費やすとは思えません。
そうなれば、わざわざ面倒な急須を使って淹れるということをせず、蓋を捻れば、それなりの味わいのお茶が飲めるペットボトルや缶飲料に流れるのは、必然です。
当然、リーフティーは売れなくなりますから、茶価は量販店の言うがまま。どんどん値を下げざるを得ず、それを実現するためには、より効率的な量産による規模の経済が必要になり、結果的にさらにお茶が没個性になる。そうなるとさらに値を下げざるを得ない・・・という悪循環に陥ります。
経済学的にいえば、”コモディティ化”した商品が必然的に辿る路です。
じゃあ、「お茶は今後、お先真っ暗なのか」というとそうではありません。
世界的に見れば、健康的な側面からも、お茶の消費量は増えてきています。
隣の中国では、ここ20年ほどで生産量が60万トン前後から、227.8万トンへと3倍以上に伸びています。
株式市場へ新規上場する茶葉会社も数多く出ており、往年の日本のITブームを思わせる急成長産業になっています。
※詳細は当社で発行している冊子「中国茶年報2015」でご確認ください。
「適切な構造転換を行えば、こうした世界的な流れに乗り、茶業は新しい成長曲線を描けるのではないか?」というのが、当社の基本的な考え方です。
急須の無い家が、いつの間にか茶器だらけに
「急にお茶が売れるようになる、なんてことがあるのか?」と訝しがる方のために、1つの例を挙げましょう。
急須の無い家だったものが、数年でお茶のヘビーユーザーになったという話です。
実家には急須はありますが、一人暮らしを始めてから、自宅に急須はありません。
どうしても飲みたいときはティーバッグで良いし、わざわざ急須を買う必要はありませんよね?そもそも、お茶にさほど関心はありません。どれを飲んでも、どうせそんなに変わらないでしょう?
食事の時にはやはりお茶があると良いと思いますが、自分で飲むくらいなら、ペットボトルで事足ります。
スーパーの特売で2リットルのを買えば、安いし経済的です。ホットも、マグカップに入れて電子レンジでチンします。来客用のお茶ですか?誰かを家に招いてお茶を出すというのも、そんなに機会がありません。
むしろ、コーヒーの方が受けがいいので、コーヒーのエスプレッソマシンは購入しました。
こういう方は、今の40歳以下の人には、かなり多くいるのではないかと思います。
ところが、こういう方でもあっという間にお茶のヘビーユーザーに転向するケースが結構あります。
たとえば、「台湾に行ってお茶屋さんで烏龍茶を色々飲ませてもらったら、ものすごく種類があって、お茶が面白くなった」など、旅先で違う種類のお茶に触れて、興味を持ち、そこから”お茶そのもの”を学ぼうとする方は増えてきています。
特に、中国茶・台湾茶などでは、お茶の製法そのものを学ぶ必要がありますので(茶の六大分類を学ぶのが基本です)、お茶の製造プロセスやコストなども理解されています。なので、日本茶では考えられないような値段(25g2,000円とか)というお茶を選ぶことにも、あまり抵抗がありません。ワインを1本買うより、ずっと経済的で何回も楽しめると思っています。
さらに、お茶と茶器を合わせることも、ある程度、理解されていますから、茶器を少しずつ買い揃え、急須の無い家がいつの間にか、数十個の茶器に囲まれている・・・ということも。
この間、わずかに数年。
急須の無い家が多くあるということは、先入観念の無い消費者が多いということでもあります。
むしろ、今の時代の方が、お茶のマーケットの伸びしろは大きいのです。
このような急にお茶に目覚める人は、どのようにして生まれるのか?
しばらくは、これについて考えてみたいと思います。
次回は1月20日の更新を予定しています。
※なお、上記の話は、私の「実話」です。