第109回:オンラインでより重要になる、お茶の品質

オンライン講座がスタートして

11月1日からオンラインセミナーをスタートさせ、昨日までに5つの講座を実施しました。
おかげさまで、講座の教材としている茶葉の品質や講座の内容(映像、音声)などについては、一定の評価がいただけているようです。
もちろん、まだまだ技術的なハードルなどから、行き届いていない点や不十分な部分もあるのですが、予定通り、年内には当初の想定水準には届くのではないかと考えています。

セミナーをオンライン化するにあたっては、

「(コロナで)仕方が無いから、オンラインで学ぶ」

ではなく、

「オンラインの方が良い。むしろ学びやすい」

と言っていただけるレベルにしないと意味が無い、と考えて取り組んでいます。
消極的な選択ではなく、積極的な選択になるぐらいでなければ、費用をいただくのは失礼だと思うからです。

たとえば、映像の画質。
パソコンに付属するWebカメラでは、はっきりとした映像を送信することは難しいでしょう。
ぼやけた粗い映像では、たとえば茶葉の美しさや色合いなどは伝わりません。
さらにその場にいないからこそ、固定の角度からだけではなく、複数のカメラを切り替えて、見たいところが見えるようにすることも必要でしょう。
そのためには相応の画質を有するカメラや映像の切り替え機材(スイッチャー)などを準備しなければなりません。

音質も極めて重要です。
器にお茶が注がれる音は、お茶を飲みたいという気持ちを喚起させる効果があります。
そのような音も録りつつ、講座の音声も明瞭に届ける。
高音質で録音ができるマイクなどを備えておく必要があります。

このように一つ一つを見ていくと、消極的な選択ではなく、積極的な選択になるためには、様々なハードルがあります。
これを一歩一歩、越えていくという作業をずっと続けています。

※今週末に開催される 地球にやさしい中国茶交流会 では、ライブ配信番組の制作を担当していますので、映像品質などを確認いただけると思います。

 

お茶の品質が鍵

とはいっても、講座の満足度を左右する一番の要因は、「お茶の品質」だと感じています。

講座は知識を得る場でもありますが、同時に体験を得る場でもあります。

対面式の講座であれば、体験するのは講座の内容だけではありません。
たとえば、会場までのアプローチから会場の雰囲気、同席する方の雰囲気など、講座の内容以外にも様々な要素が加味されます。
外出をするという行為自体が、非日常になることから、対面式の方が満足度はおそらく得やすいだろうと思います。

一方、オンラインの場合は、自宅など自分の身近な場所が会場になります。
講座の内容を判断するプラスαの要素が少なくなるので、講座の内容・体験はよりシビアに判断されることになります。
そのようなことから、視覚と聴覚に訴える映像や音声を追求しているのですが、それだけでは不十分です。

受講生にとって、一番強烈な印象を与えるのは、結局のところ、手元で飲んでいただくお茶の香りであり、味わいです。
嗅覚と味覚をどれだけ揺さぶるようなお茶であったかが、講座の満足度を大きく左右します。

淹れ方については、事前に淹れ方の動画を撮影して、見ていただくようにしています。
動画では、茶葉の状態を把握したうえで、湯温や茶葉量、抽出時間等の戦略を立てて説明し、実際に淹れたお茶の味わいの感想も3煎まで述べる・・・という構成にしているので、1本10分前後の動画になっています。
40種類のお茶を飲んでいただくので、40本の動画(合計すると約400分!)を作る必要があり、これだけで数回の講座に匹敵する分量です(編集技術が向上次第、YouTubeで公開する予定です)。

この動画作成は必要なことなのですが、編集の時間が思ったよりもかかり、正直、かなり重たい作業です。
が、ここを怠ってしまうと、本来のお茶の香りと味わいを感じてもらうことができなくなる可能性があります。手を抜けません。

とはいえ、このような努力をしてもしなくても、品質の高いお茶は、どのような淹れ方をしても美味しいものです。

茶葉の品質の高さが、淹れ手の技量をカバーすることを「茶葉に助けられる」と言うことがあります。
初心者の方が参加するような講座ほど、実は一定以上の品質が必要なのです。
オンライン講座になると、これまで以上にお茶の品質が鍵を握るのではないかと感じます。

そうした品質の高い茶葉を扱う業者の方が、小規模ながらも日本に大分増えてきているというのは、非常にありがたいことだったと感じています。

 

次回は12月1日の更新を予定しています。

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