中国茶の多様性を生み出す、製法と品種

愛好者の立場に立つと、中国茶は種類が多いことも魅力の一つです。

「六大分類」という分類法に見られるように、各地域に様々な茶の製法があるということが一つ。
また、広い国土を有するがゆえに、多様な気候・植生があり、それに見合った茶の品種があることも一つの要因ではないかと思います。

雲南の奥地のジャングルのような地域で育つ茶樹と、寒冷な土地で育つ茶樹では、当然違いがあります。

製法 × 品種 の組み合わせが、無数に考えられること。

これが、中国茶に多くのバリエーションを生み出しているのは、間違いありません。

 

品種の純血化が進行中

少し前の中国において、さらに特徴的であったのが地方固有の在来種の多さです。
”地方群体種”と呼ばれる、その土地独自の系統(品系)の茶樹があり、個性が微妙に異なる茶樹が合わさることによって、独特の風合いをもたらしていました。
もっとも、その微妙な個性の違いは、芽吹きのスピードの違いや不均一さから来る製茶の難易度、茶葉の見栄えの問題など、決して経済的に効率が良いものではありませんでした。

日本、あるいは日本統治時代を経た台湾においては、品種の整理が行われ、少数の優良品種が挿し木などの無性繁殖によって育種され、全国的に植えられています。
戦前から、このような品種化が進められているので、ある意味、品種の純血度が高かったと言えるでしょう。

ところが、中国も茶業の振興を進めるなかで、地方群体種から無性繁殖品種(無性系良種)への切替を急激に進めてきています。
2012年に初めて生産面積の半数を超え、2017年は約64%にまで急速に拡大しています。

もっとも、日本のやぶきた、台湾の青心烏龍のように全国的に栽培される1つの品種に偏るのでは無く、地元の地方群体種から選抜した品種が選ばれているという傾向があります。
たとえば、龍井茶であれば龍井群体種の中から選抜された、芽吹きの早い龍井43が、主力品種になっていますし、雲南省においても、雲南大葉種の一種である南糯山の地方群体種から選抜された、雲抗10号が農園型の茶園の主力品種になっています。

大紅袍も原木の中で優良な形質を持った1本が選定され、「大紅袍」品種となった

 

特定品種の使用が「標準」で規定されることも

このような無性繁殖品種の普及を後押しするように、使用する品種を「標準」(規準)で規定する茶も出て来ています。

たとえば、西湖龍井茶として使用できる品種は、『西湖龍井茶』(GH/T 1115-2015)において、「龍井群体種(地元の在来種)」か、そこから選抜育成された「龍井43」「龍井長葉」のいずれかの品種でなければならないことが明記されています。
いくら地域的に西湖龍井茶の生産範囲であり、その製法に則ったとしても、品種が上記以外であれば、「西湖龍井茶」としては販売できず、よりブランド力の弱い「龍井茶」としてしか出荷できないのです。
「西湖龍井茶」として出荷するのと「龍井茶」として出荷するのでは、市場の販売価格が全く違いますので、生産農家の収益に大きな影響が出てしまいます。

このようなことから、西湖龍井茶の生産地域内で栽培されている品種は、徐々に上記の品種(とりわけ芽吹きの早い、龍井43)へ集約していっています。

また、昨年11月に改訂された国家標準『白茶』(GB/T 22291-2017)においては、白毫が顕著に表れる品種である、福鼎大白茶や政和大白茶のような大白茶種あるいは水仙種の使用が求められるようになりました。
具体的には、白毫銀針、白牡丹については、大白茶あるいは水仙品種を用いたものでなければならない、と規定されています。

これまで「小白」として許容されてきた、大白茶以外の在来品種では、高級白茶である白毫銀針や白牡丹は生産できなくなったということです。
このことは、白茶の産地においては、大白茶や水仙への品種転換を加速させるものと見られます。

 

中国の茶業界においては、熟練工の不足から急速な機械化が進んでいますが、同時にこうした品種化も急速に進んでいます。
今後の中国茶の行方を占う上でも、品種化の進展は大いに注目すべき分野であると思われます。

 

次回は2月20日の更新を予定しています。