第96回:5月21日は国連制定のInternational Tea Dayですが・・・

2020年から始まる新しい国際デー

2019年12月19日に開催された国際連合の第74回総会の全体会議で、毎年5月21日を”International Tea Day”とすることが決議されました。
この International Tea Day の日本語訳は、まだ公式に日本の国際連合広報センターからアナウンスされていないようですが、”国際お茶の日”あるいは”国際お茶デー”のような名称になるものと思われます。

国連が国際デーを設定する意義については、国際連合広報センターの記述によると、以下の通りとなります。

国際デーは、さまざまな懸案事項について一般市民に情報を提供し、グローバルな課題に取り組むための政治的意思と資源を動員するとともに、人類の成果を祝い、さらに向上させるための機会です。国際デーは国連創設以前から存在していましたが、国連はこれを強力なアドボカシーの手段として受け入れています。

いずれの国際デーも多くの関係者がそのテーマに関連する活動を組織する機会となります。国連システムの機関や部署、そして最も重要なのは加盟国政府や市民社会、公共・民間セクター、小中高校と大学、さらに広くは市民が、国際デーを啓発活動のきっかけとして活用することです。

出典:https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/36552/

この文章に見られるように、国連の設定する国際デーは何らかの世界的な課題を認識するための機会として位置づけられています。
お茶がどのような世界的な課題に結びつくか、ですが、これは国連の International Tea Day(英語) のページに記載されています。

 

茶を飲むことの意義とは?

まず、「茶を飲むことの意義」という文章をご紹介します。

Why drink tea?

Tea is a beverage made from the Camellia sinesis plant. Tea is the world’s most consumed drink, after water. It is believed that tea originated in northeast India, north Burma and southwest China, but the exact place where the plant first grew is not known. Tea has been with us for a long time. There is evidence that tea was consumed in China 5,000 years ago.

Tea production and processing constitutes a main source of livelihoods for millions of families in developing countries and is the main means of subsistence for millions of poor families, who live in a number of least developed countries.

The tea industry is a main source of income and export revenues for some of the poorest countries and, as a labour-intensive sector, provides jobs, especially in remote and economically disadvantaged areas. Tea can play a significant role in rural development, poverty reduction and food security in developing countries, being one of the most important cash crops.

Tea consumption can bring health benefits and wellness due to the beverage’s anti-inflammatory, antioxidant and weight loss effects. It also has cultural significance in many societies.

(以下、筆者訳)

なぜ茶を飲むのか?

茶葉カメリア・シネンシスから作られる飲料です。茶は世界で水の次にもっともよく飲まれる飲料です。茶の原産地はインド東北部、ビルマ北部そして中国の西南部だと考えられていますが、この植物がどこで最初に育ったかの明確な位置は定かになっていません。茶は長い間私たちと共にありました。中国においては、5000年も前から消費されていたという証拠があります。

茶の生産と製造は開発途上国の数百万の家族の主要な収入源となっており、そして多くの後発開発途上国に暮らす数百万の貧しい家族が生計を立てるための主要な手段です。

茶業はいくつかの最貧国の収入と外貨獲得手段であり、そして労働集約的な産業であり、とりわけ僻地や経済的に遅れた地域において仕事を提供することもできます。茶は発展途上国における地方の開発、貧困の撲滅と食糧安全保障において際立った役割を演じることができ、最も重要な経済作物の1つになるでしょう。

茶の消費は飲料としての消炎作用、抗酸化作用と減肥作用により、心身の健康をもたらすこともできます。さらに茶には多くの社会において文化的な意義を持っています。

この文章は茶の持つ様々な側面に言及しています。
が、中心的なテーマは、茶は開発途上国や経済的に遅れた地域では、貴重な収入源になる作物である、という側面だと思います。
世界の貧困の解消のために、茶は大きな役割を果たすはずだ、という意味合いがより色濃く出ているようです。

 

International Tea Dayとは?

これを踏まえて、今回設定した International Tea Day とは以下のようなものであると述べられています。

International Tea Day

Re-emphasizing the call from the Intergovernmental Group on Tea to direct greater efforts towards expanding demand, particularly in tea-producing countries, where per capita consumption is relatively low, and supporting efforts to address the declining per capita consumption in traditional importing countries, the General Assembly decided to designate 21 May as International Tea Day.

The Day will promote and foster collective actions to implement activities in favour of the sustainable production and consumption of tea and raise awareness of its importance in fighting hunger and poverty.

(以下、筆者訳)

International Tea Dayとは

茶に関する政府間グループによる呼びかけを再強調し、とりわけ一人あたりの消費量が比較的低い茶産国家の需要拡大に向けての直接的な取り組みと伝統的な輸入国家における一人あたりの消費量減少に対処する取り組みを支持するために、全体総会において5月21日をInternational Tea Dayとすることを決定した。

この日は、お茶の持続可能な生産と消費を改善する活動や飢餓・貧困と闘うことの重要性について認識を高めるような集団行動を促進することでしょう。

意義としては、茶産国の内需拡大と消費国の消費量下落を食い止めることを目的としているようです。
そのために国際的な協調や取り組みを行うことを宣言しているようです。

このほか、お茶の生産が国連の掲げる「持続可能な開発目標」のどの項目をクリアするのか、茶と気候変動などについても記載されています。

 

国連での決議の状況

ここまで見てきたように、内容としては非常に国際的な意義の高いもののように感じられます。
国連でも賛成多数で決議されたのですが、その公開された議事録(https://undocs.org/en/A/74/PV.52・英語)を見ますと、なかなか難しい国際社会の縮図であったことが分かります。
この議事録をもとに、議決における、賛成国と反対国、棄権国を抜き出して記すと以下のようになります。

賛成 反対(3) 棄権(44)
アフガニスタン、アルジェリア、アンゴラ、アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、アルメニア、アゼルバイジャン、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベラルーシ、ベリーズ、ベナン、ブータン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルネイ・ダルサラーム、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア、カメルーン、中央アフリカ、チャド、チリ、中国、コロンビア、コモロ、コンゴ、コスタリカ、コートジボワール、キューバ、北朝鮮、ジブチ、ドミニカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、エリトリア、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、ジョージア、ガーナ、グレナダ、グアテマラ、ギニア、ギニア・ビサウ、ガイアナ、ホンジュラス、インド、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、ヨルダン、カザフスタン、ケニア、キリバス、クウェート、キルギスタン、ラオス、レバノン、レソト、リビア、マダガスカル、マレーシア、モルディブ、マリ、モーリタニア、モーリシャス、メキシコ、モンゴル、モロッコ、モザンビーク、ナミビア、ネパール、ニカラグア、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、パラオ、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、カタール、モルドバ、ロシア、ルワンダ、セントクリストファー・ネイビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サモア、サウジアラビア、セネガル、セイシェル、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、南アフリカ、スリランカ、スーダン、スリナム、シリア、タジキスタン、タイ、東ティモール、トーゴ、トリニダード・トバゴ、チュニジア、トルコ、トルクメニスタン、ウガンダ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ウルグアイ、ウズベキスタン、バヌアツ、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ザンビア、ジンバブエ オーストラリア、イスラエル、アメリカ アルバニア、アンドラ、オーストリア、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、カナダ、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、モナコ、モンテネグロ、オランダ、ニュージーランド、北マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、韓国、ルーマニア、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、ウクライナ、イギリス

大多数の茶産国および途上国は賛成に回り、反対はオーストラリア、イスラエル、そしてアメリカのみ。
そして、西側の先進国の多くは棄権しています。

実は、この議案については、中国が主導的な立場を演じていました。
中国自身も自国内の貧困解消(とりわけ僻地にある農村部)として茶業を大いに活用している国です。

中国が主導して提出した議案であったことが分かれば、多くの方はこの投票結果に納得することでしょう。
アメリカが反対に回り、多くの先進国が棄権に回ったのは、昨今の米中関係と世界情勢を考えると頷けるものです。

本来であれば世界的な動きになるはずであったInternational Tea Dayですが、日本や他の先進国で全くといっていいほど盛り上がらないのは、このような理由があると思われます。
日本国内で盛り上がらない理由をさらに付け加えれば、既に各業界団体が自前の記念日を制定して、それが定着しているという理由もあると思われます。

International Tea Dayは、国際デーの趣旨としては十分に素晴らしいものだと思います。
しかし、国際政治の世界は実に難しいものであり、先進国で定着することはひょっとしたら難しいのかもしれません。

 

次回は5月16日の更新を予定しています。

 

 

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